綾瀬円佳は軍師だった

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綾瀬円佳は軍師だった

「沙耶香さんは会社は辞めちゃうのね。」 「ええ、でも目標が出来たの!」 沙耶香は、自分の想いを何故か綾瀬には素直に話せた。 彼女は、噂は好きだけれど決して間違った噂は言わないし嘘も言わない人だから沙耶香は好感を持っていた。 それに彼への想いについてはすでに今までの感情ではなく自分から彼に認められたいと思ったその彼が以前に唯一好意らしき感情を表したのが神田美夜に対してだという事は彼女のような女になる必要があった。 今までの自分は、父親に逆らいながらも結局父親の手の平でいるしかないとも思っていたし、自立なんてほど遠い庇護下に置かれながら甘えて世の中、父親に頼めばなんとななると思い込んでいた。 でも、父親の威光で思い通りになる人物なんて小者だとやっと気が付けば心から欲しい男はそんな小者ではなく野生の獣みたいな人だった。 今までの自分では彼を射止める事はできない・・何からすればいいのか? 金子との時間は無駄ではなく痛手を負ったが金槌で頭を殴られたかのような衝撃とともに目が覚めた。 「まずは、ビジネス英語とTPOじゃないかな?」 「ビジネス英語は教室に通うとしてもTPOは今のままでは駄目?」 「そうね、仕事には不向きなんじゃないのかな?手入れはいいとしてゴテゴテ飾りつけた指でパソコンは難しいと見られるし派手な服は反感を持つ人もいるでしょ?私服ならともかく仕事にはそれなりの服装があるわ。」 綾瀬を連れてデパートに仕事用のスーツを買いに行き「地味?」とも思えたが自分以外の女子社員は確かにゴテゴテはしていない。 アクセサリーも派手なものではなくシンプルなものにしたり色々綾瀬は教えてくれた。 思い出せば神田美夜は、仕立てはいいスーツだ派手ではないが人が見て不愉快ではないブランドを選択していた。 そして沙耶香は、父親に電話でなく会って初めて頭を下げる事をした。 「どうかお願いです、鏡ホールディングスと荒井産業の共同出資した会社に推薦していただけませんか?」 今までの娘とは違い芯の通った感じがした父親は驚きはしたがその理由を娘に問いかける。 「神田美夜さんみたいな女性になりたいんです!仕事ができて自立ができてそして好きな人の前で好きだと言いたいです。」 娘の変貌は、憧れの女性の影響でしかも娘が誰かに本気で恋をしたというのなら父親として応援もしがいがあると一条隆弘は思った。 人生に何度も本気の恋は無いのが普通で今まで娘は、ままごとのような恋しかしていない事は誰よりも知っていたがそれも仕方ないとも隆弘は思っていたが、そんな娘が本気で恋焦がれる本気の恋をしているその為に成長し たいというなら娘を支援しがいもあると隆弘は思った。
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