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「一条さん・・送ります。」
そう言ってアルバートの後ろから声をかけたのは宇佐美だった。
「宇佐美部長・・彼女は僕のパートナーですから僕が送ります。」
そうアルバートが言うと宇佐美は「仕事のですよね。俺は上司で責任者ですから送ります何かあれば俺の責任ですから。」
そう言うと宇佐美は、手慣れた様子で沙耶香を抱きかかえて呆然とする面々を放置して沙耶香を連れてその場を去った。
「一条さん大丈夫ですか?」
「大丈夫です。あ!私のバックは?」
「ありますよ。」
「すいません。」
「アルバートの事が好きなんですか?」
「いいえ、何故?」
「俺がいない場所であんなに飲めば危ないって解らないのか?」
宇佐美さんが怒っている?何故?理由が解らない沙耶香だったが宇佐美は何時もの彼で無い感じがした。
タクシーから降りた場所は、自分のマンションの前ではなく見た事のないマンションでその10階でエレベータが停まると宇佐美は何も言わずに沙耶香を連れ込んだ。
「ここは?」
「俺の部屋だよ。」
靴を脱いでまだフラフラしながらリビングに行くと沙耶香の部屋より少し手狭ではあるがソファーがあったからそこに沙耶香は座る。
「ほら、水!」
「有難うございます?」
「あー!なんでそんなに危機感が無いんだ!俺でもだけどアルバートでもだぞ男の大半は酔った女を自分の部屋に連れ込む事を考えるんだ。あのアルバートは外から見ても君に気があるだろう?解らないのか?」
「それはそうですが・・。」
「なのにあのまま送らせていたら今頃ここでは無く彼の部屋かホテルだろうよ!」
「あ!」
「あ!じゃない!君がアルバートが好きならばいい。でもどうなんだ?」
「私が好きなのは宇佐美さんで彼じゃない。」
彼の目をみてそらさず一気にそう言うと一瞬空気が停まったような感じがした。
「私が好きなのは貴方よ!貴方が以外は嫌よ。」
目に涙をためてそう訴える沙耶香の隣に腰を降ろした宇佐美は苦しそうに沙耶香を見た。
「俺は君には相応しくはない。」
「私が選んだのは貴方だわ。相応しい?相応しくない?誰にも何も言わせない貴方が好きなのよ。」
ボロボロと涙を流してそう訴える沙耶香の頬に宇佐美は手を這わせると「苦労するぞ?」と言いながら唇を重ねた。
「いいわ。苦労してもいいわ。」
抱きつく沙耶香を宇佐美は抱きしめた。
宇佐美と沙耶香の気持ちが通じたこの時に残されたアルバートは、
「噛ませ犬って奴ですか?」
と綾瀬円佳に言った。
「そうね、それ以上でも以下でもないわ。貴方一条さんを愛していたわけではないでしょう?」
「そうでもないですよ。魅力的だとは思っていましたから。」
「だったら傷が浅いうちで良かったんじゃない?」
「慰めてくれますか?」
「はあ?まっあそこに沢山女の子がいるからどうぞ。」
「つれないですね。」
そう言いながらも女の子達の所へ向かうアルバートは足取り軽く気軽に女の子達に接していた。
「軽い!」
そう独り言を言って手元にある酎ハイをのむ綾瀬は沙耶香がどうなったかも気になるが、少し明日以降は噂話が楽しめそうだと思うのだった。
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