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真実は心に痛い
「宇佐美英明が金子に宣言したらしいぞ。」
「金子の元カノを宇佐美が狙うらしいぜ。」
そんな会話がチラチラと聞かれる中に沙耶香についての噂も混じるようになっていた。
その噂は、直接沙耶香の耳には入らなかったが綾瀬円佳から聞いて激怒した沙耶香。
「非常識だよ、人前で自分の彼女の事を言うのは・・。」
「そんな事を彼が?」
「そうよ。」
宇佐美とのやり取りの中で性生活についての会話があったらしく宇佐美に煽られた金子が沙耶香との生活も話したというから非常識だと沙耶香も思う。
「元カノの事を言うのも男としてどうかと思うわ。」
沙耶香は、義姉から聞いた事や今回の件を聞いて少し金子の人間性に疑念を抱くようになった。
「でも~宇佐美さんもやるわよね。神田美夜さんを擁護したんだから。」
「擁護?」
「私から見て同じ女として神田美夜って人物は凄い人だと思うのよ。金子さんが鏡に来てからも荒井産業での営業成績も企画力も凄いのよ。しかも、外資系に強いらしくて大きなプロジェクト成功させてるわ。荒井産業は不動産だから女性には厳しい世界なのにね。」
宇佐美英明は、確かに仕事が出来るその彼は神田美夜を悪く言わずに逆に好きだと言ったらしい。直接声をかけている場面を見た人もいたから本気なのだろうと綾瀬円佳は言う。
沙耶香は、冷静になって考えて神田美夜を悪く言っている人物で出来る人がいないという事実に気がついた。
自分より仕事ができる女性にたいして負け惜しみを言っている男達だと思えば確かに違和感なく納得でき、女性達が彼女を悪く言う人が一人もいない事がそれを物語っていた。
その日からたまに金子と会うが冷めた気持ちのままでも彼を試すように「いつ結婚できそう?」「荒井産業にいつ戻れるのかな?」とあざといとわかっていても媚びる笑顔をつくり彼に甘えながら聞く。
彼はもう少しだと言うがその間に沙耶香は彼を調べ尽くす事にした。
「あれが神田美夜?」
遠目で見た彼女は、ホストの彼と一緒に買い物をしていたが堅実に自炊しているのか食材を買っていた。支払いは彼がしていたが彼がその時出していたカードの色を見てすぐにただのホストではない事に沙耶香は解った。
義姉が言うには、生意気なホストだけれど少し前に「伝説のホスト」と言われたくらいに人気のあったホストだったと言った。
今は、引退していてたまに店に頼まれて手伝う事もあるが今回たまたまだったというから本業は義姉も知らないと言っていた。
しかし彼が今でも一定の収入があるのは、彼が出したカードがそれを物語っている。
遠目で二人をみた沙耶香は、少し美夜の彼のキョウに見覚えがある気がしたが気のせいかとも思う。
「どこか・・誰かと似てる?違うかな・・。」
後にそれは間違いでは無かったと解るのはもう少し先だった。
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