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沙耶香は、美夜の恋人が誰かに似ていると感じたがすぐには解らずにいた。金子の事を調べれば調べるほど辻褄が合わない事が多くなり彼が合えば囁いてくる美辞麗句でさえ居心地が悪く感じる。
「私に嘘はつかないで!」と言いたくなるのを我慢しながら時を待つ。金子直樹に対する淡い恋心は、すでに消えていたがそれでも嘘をつき沙耶香を利用しょうとする彼の行動は沙耶香を傷つける。
彼が何かを言うたびに言い訳に聞こえてくるのと彼自身の言う「愛してる。」という言葉でさえ軽く本当に沙耶香自身を愛しているのではなく沙耶香のもつ一条家の後ろ盾が欲しいだけだと今は解る。
彼が「もうすぐ片がつく。」と言った時には何かよからぬ事を企んでいるのはすぐに解ったが沙耶香は傍観する事にした。
そんなある日、沙耶香は綾瀬円佳を通して秘書課の戸田涼花に呼び出された。
また文句か何かを言われるのかと緊張もしたが綾瀬も同席すると言うから話を聞く事にした。
「一条さんごめんなさい。」
「えっ?」
「実は、貴女に文句を言ったのは金子さんに依頼されたのよ。」
「それはどういう事?」
沙耶香が金子をいい人だと思った給湯室でのやり取りは、金子が戸田に依頼してその状況を作り出すのに彼女は手を貸したと言う事だった。
でも何故いま戸田が沙耶香にこの事実を話そうと思ったのかが沙耶香には解らない。
「一条さんには言いにくいんだけど、彼少しいい噂が無いのよ。」
「どういう事?」
「成績も落ちているみたいだし、繁華街でこの間も見たのだけどね揉めている所も見たの。」
「えっ?」
戸田が飲み潰れた役員を繁華街に迎えに行った時に金子が揉めていたと言う。彼女が嘘をついているとは流石に思えず沙耶香は傷つくのは解っていても金子を徹底的に調べる事にした。
ギャンブル癖も酷いもので若い頃からでしかも彼の口座の給料は彼自身が使っていることも解ると調査会社からの結果は神田美夜が彼に毎月金を渡していただけでなく、彼女が金子の仕事を手伝う事はあっても逆は無いという証言まであったらしい。
また荒井産業での女性社員の証言で前時代的な考えの男性社員が多い中、成績がいい神田美夜を疎ましがる上司の顔色を伺って彼女を孤立させたり追い詰めるような事をしたり目に余るというのだから情けないと女性達は密かに憤慨しているらしい。
「荒井産業の上層部はなにやら大がかりな事を考えているみたいですけれど、かなり厳しく情報が管理されているようで出て来ないですね。」
調査員は、そう言いながら調査報告書を沙耶香に手渡した。
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