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憧れの人と気になる彼
一緒に汚い場所に押し込められて恐怖すら感じているけれど負けるのが嫌でバタバタと手足を動かそうとするけれど動かない!
今までに見た事のない狂気を孕んだ金子直樹の顔は醜悪そのものでこんな男を一時でも信じた自分が情けなく愚かだと思う沙耶香。
神田美夜は、首筋に赤い二つの火傷の後がありスタンガンを使われたのかと想像できた。
女二人を男に売って自分の遊んだ金を支払おうなんてあり得ない考えだと沙耶香は、思うが金子の中では女は、自分の為の道具でしかないのだろう。
今までは、出世の道具だった神田美夜と自分だったが使えなくなったから不用品を売るかのように目の前の男に売ろうとしている。
パニックになりかけている自分の横で目を覚ました神田美夜は無駄に暴れるのでもなく取り乱す事もなく毅然と金子にも対峙していた。
その横顔は、女の沙耶香からみても美しく強い女性だと思ったのと同時に憧れを感じた。
「お前、葵って女知っているか?」
「橋田 葵の事か?」
この会話から状況が変わる・・金子の悪癖とクズな人間性はかなり前からだと会話の端々で理解できた。
そんな会話の途中で「兄さん。俺の言った通りだろう?」と言いながら部屋に入って来たのは宇佐美英明。
何故彼がここにいるのか理解が出来ない沙耶香だったが状況が変わったのは流石に理解できた。
暴れるのをやめて話を聞きながら全体の状況をつかもうと沙耶香は思う。
このままこんな男に馬鹿にされ侮辱されて終わるなんて沙耶香のプライドが許さない。
数分後には神田美夜を助けに来た鏡恭介が現れて沙耶香も解放されたが、腹の底から湧き上がる怒りを堪える事を出来ずにいた。
殴りかかる鏡恭介を止めたのは神田美夜でこの時でも自分とは違い冷静な彼女だったが、逆に沙耶香はツカツカと倒れ込んでいる金子に向かって近づき思いっきりヒールで金子を踏みつけた。
この男が今までに踏みつけてきた女の分まで沙耶香は踏みつけてやった。
「ほんと!クズだわ、許せない!」
「痛い!やめろ!」
「痛いですって?痛いのは貴方の犠牲になった私や葵さんよそれに美夜さんも!痛い・・この程度で?」
怒りに任せて金子を痛めつける様子を宇佐美は驚いた顔をして見ていたがそんな事は沙耶香にとってどうでも良かった。
「ね!お願い!この男は死ぬほど苦しめてやって!」
宇佐美の兄だと言う橋田翔が面白いものを見るように沙耶香を見て
「ああ、まかせておけ。」
と言った。
金子を橋田の部下らしき男達が連れて行きその様子を腕組みをしながら沙耶香は眺めていた。
沙耶香もこの場から去ろうとした時に兄弟の会話が聞こえてきた。
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