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「一条さん、荒井産業の宇佐美部長にこれ届けて欲しいの。」
「はい。承知しましたー。」
嬉しそうに書類を抱えて荒井産業に向かう沙耶香を送り出し経理の綾瀬の方を見た美夜。
「部長!お願いがあります。」
「綾瀬さんどうしたの?」
「実はですね・・・。」
綾瀬は、沙耶香の淡い恋心を神田に聞かせると荒井産業の宇佐美担当に出来ないかと神田に進言してきたそれはもちろん問題の無い事ではあった。
「宇佐美さんね~わかったわ。」
「ありがとうございます。」
沙耶香の恋の応援団は意外に多くなり「腹黒王子」陰で言われていた宇佐美の反応を神田も綾瀬も楽しみにしていた。
宇佐美英明は、頭が良く家族には問題はあるが本人は仕事が出来て本来の人間性は情の深い人間だと神田は思っていた。沙耶香もまた色々あったが神田の部下となってからは、真面目で陰で努力している姿を昔の自分と重ねてみれば応援もしてあげたくなる。
「上手く行くといいけれどね。」
「そうですね。」
合同のプロジェクトの一人として沙耶香を入れる事を決めていた神田は頻繁に宇佐美と沙耶香が接触するように考えていた。
上手くいくかどうかは二人の問題で仕事上でもすでに沙耶香は、上手く仕事をこなしつつあり男性社員も上手に使うのは天性の物だと神田は感心すらしていた。
前のようなチャラチャラした服装でなく上品な服装で化粧もきっちりしているが派手なメイクではない。印象としては上品な女性でありどこか可愛い印象もある沙耶香は、周囲に受け入れられている。
「恋をすれば変わるのね。」
綾瀬は、そう言いながら席に戻り自分の仕事を進めたが、恋をすれば変わるという言葉は身に覚えがある美夜も二人を見守る事にした。
「宇佐美は、中々難しい男だと思うがな・・。」
「社長?」
「僕は宇佐美は仕事のできる怖い男だと思っているよ。あのお嬢さんの手に負えるかね~。」
一色社長はそう言うが神田はニッコリと笑って。
「意外に上手く行くんじゃないでしょうかね。うちの一条もなかなかですからね・・。」
「ほう~神田が一条を押すのか。」
「ええ、可愛い部下ですからね。」
一色にすれば一匹狼のような仕事の仕方しか出来なかった神田が部下を育てて可愛い部下と言った事が喜ばしかった。
皆が見守るなか沙耶香は難攻不落の宇佐美と対峙しているのだった。
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