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「宇佐美部長、うちの若いスタッフと荒井産業の営業担当と親睦会しませんか?」
「親睦会ですか・・キリが良い時期かもな。」
一つ大きな仕事が区切りがつき新しい仕事に切り替わる事もあり宇佐美も親睦会には前向きだった。
「綾瀬さんそちらのスタッフのとりまとめお願いできますか?」
「ええ、うちの神田は難しいと思うのですが神田以外は大丈夫だと思います。」
「あ~でしょうね。」
自由にさせているようで意外に独占欲の塊のような鏡恭介を知っている宇佐美は納得だった。
結局週末に海岸エリアで少しお洒落な店を数人で行く事になったが沙耶香は、緊張していたが気軽に行こうという綾瀬の助言で落ち着いた。仕事以外で宇佐美と会うのはあの事件以来だったからどう接していいか解らなかったのだ。
「普通でいいんじゃないの?」
そう綾瀬は、言うがその普通というのが中々難しいだから沙耶香は開き直る事に決めた瞬間肩から力が抜けた感じがした。
嫌われている訳ではないし前よりは宇佐美の視線を感じる事もあるのも気のせいでは無いという事もあり気持ちをしっかり持って彼に近づきたいと思うのだ。
飲み会は6人ほどの少人数で和気あいあいという感じで始まった。
「一条さんって前はよくタクシーで出勤していましたよね?」
そう聞いてきたのは営業の酒井君で気のいい人だが何でも知りたがるという特徴のある人だった。そんな彼の質問にも沙耶香は笑顔で答える。
「ええ、前はそうでしたが今はちゃんと地下鉄使ってますよ。いいですよね地下鉄って時間読めるからタクシーは交通事情で変わりますから。」
地下鉄の路線も覚えクライアントの会社に行くのにも困らなくなったと答える沙耶香を黙って宇佐美は聞いていた。
「私は何もしらないまま育って我儘だったと思います。でも今は仕事が楽しいですし、自立したいんです何もかも与えられる生活の代償が自由にならない恋愛や結婚ですからそれが嫌な私は自立する必要があるんですよ。」
「お嬢様ってもの大変なんだな。」
「生活は保障され贅沢にみえても心のない結婚でお互いに義務だけの関係なのは私は嫌です。」
「それは私も嫌だわ。」
「だからまず仕事を覚えて自立して好きな人に近づきたいんです。」
頑張れ!応援するぞ!と周囲も好意的に沙耶香の心意気に賛同していた。
「良家」も楽じゃないんだね~と理解を示してくれた。
知らない事や解らない事を聞きながらも自立に向けて頑張るという沙耶香「好きな人」が誰だと誰も追及はしては来なかったが話の中には入って来ることは無くても少し離れたところで黙って聞いていた宇佐美は、これから
の沙耶香の成長が楽しみだと思っていた。
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