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触れられた。たいていの人間より冷たい。スベスベとして、滑らかな感触が分かる。骨がないせいか、人の皮だけを触っている気分だ。まるで、軟体動物のようである。幽霊ながら、人間らしさはある。
「どうして?他の人には、触れられなかったのに。」
「さあ?神様がくれた贈り物かもしれないな。あの時、私を助けた時も手を握ってくれただろ?」
「そうだね。」
「まぁ、前代未聞ってことは、急に訪れるものだからな。」
私は、立ち止まり、彼女の前で、小指を出した。
「約束だ。こんな私だが、一緒に祭りに行こう。」
しかし、ネコは、私の小指を絡めなかった。彼女は、私に背中を向け、立ち尽くした。
「すまない。さすがに、行く相手を選ぶよな。」
「そうじゃない。だって、見えない存在だよ? 触れることだって、今のが奇跡で、もうできないかもしれない。だから、私一人のために、そんなに気を遣わないで。」
「・・・。」
私は、小指を下ろした。そして、ネコと目線を合わせるため、膝立ちになって話す。
「確かに、君は、一般的には、姿の見えない存在だから。でも、反対に考えると、私にだけ君が見えるんだ。こんな特別なことはない。」
「でも、青人と私は、違うから。色々、できないこともあるし、気を遣わせたくない。」
「気を遣うだって? そんなつもりはない。私がしたいんだ。一緒に来てくれるか?」
私は笑顔を見せ、再び小指を出した。すると、ネコは、ゆっくりと小指を動かし、私のに絡ませた。
「うん!」
やっと、彼女の心からの笑顔が見れた。私は、安心し、ネコと歩き始めた。
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