#1「約束の夜」

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 ()れられた。たいていの人間より冷たい。スベスベとして、滑らかな感触が分かる。骨がないせいか、人の皮だけを触っている気分だ。まるで、軟体動物のようである。幽霊ながら、人間らしさはある。  「どうして?他の人には、触れられなかったのに。」  「さあ?神様がくれた贈り物かもしれないな。あの時、私を助けた時も手を握ってくれただろ?」  「そうだね。」  「まぁ、前代未聞ってことは、急に訪れるものだからな。」  私は、立ち止まり、彼女の前で、小指を出した。  「約束だ。こんな私だが、一緒に祭りに行こう。」  しかし、ネコは、私の小指を絡めなかった。彼女は、私に背中を向け、立ち尽くした。  「すまない。さすがに、行く相手を選ぶよな。」  「そうじゃない。だって、見えない存在だよ? 触れることだって、今のが奇跡で、もうできないかもしれない。だから、私一人のために、そんなに気を遣わないで。」  「・・・。」  私は、小指を下ろした。そして、ネコと目線を合わせるため、膝立ちになって話す。  「確かに、君は、一般的には、姿の見えない存在だから。でも、反対に考えると、私にだけ君が見えるんだ。こんな特別なことはない。」  「でも、青人と私は、違うから。色々、できないこともあるし、気を遣わせたくない。」  「気を遣うだって? そんなつもりはない。私がしたいんだ。一緒に来てくれるか?」  私は笑顔を見せ、再び小指を出した。すると、ネコは、ゆっくりと小指を動かし、私のに絡ませた。  「うん!」  やっと、彼女の心からの笑顔が見れた。私は、安心し、ネコと歩き始めた。
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