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ウイスキーと氷
はじめてウイスキーを飲んだ時の感想は『懐かしい味』でございました。
お恥ずかしい話、幼い頃氷をかじるのが好きで、父が晩酌をする際、氷を毎日のようにねだっておりました。
父がウイスキーを好んでいたのか、たまたま大瓶で買った物を大切にちまちま飲んでいたのかはわかりません。
台所の奥の棚に焼酎も日本酒も確かにあったとも思うのですが、何せおぼろ気な記憶でございます。
しかし、大人になりまして色々なお酒を嗜みましたが、懐かしいと感じましたのはウイスキーだけでございました。
ウイスキーは香り高いものですので、子供ながらに記憶に残ったのでしょうか。
昔、帰省した際、その事を両親に伝えた事がございます。
母はやだやだ呑んべぇの子だと呆れ笑い、父は英才教育だと悪びれず自慢げに笑いました。
あの、氷の表面にうっすらとシャーベット状についたウイスキー。
豆球の薄暗い明かりの中、テレビを見る父の足の間に座りかじった氷。
たまにお零れに預かれる、おつまみのイカゲソとキムチ。
そのキムチが子供には大層辛く、ウイスキーで洗ってもらった事もございました。
さすがにそれ以降キムチを食べる際は、すすぎ用の水が用意されておりました。
随分と時が経った今、同じように主人が孫に氷を与えております。
やはり大人としてここは怒るべきでしょうか。
それとも血は争えない、英才教育お願いしますと笑えば良いのでしょうか。
主人と娘は、私のこのとんでもない逸話を知っております。
なにも言えない私を、娘はにやにやと意地悪そうな笑みを浮かべ見ております。
そうですか。親のあなたがそういう態度ならば、私がとやかく言う資格はありませんね。
どうぞ、心行くまで英才教育をなさってあげてくださいな。
ですが、キムチはちゃんとすすいであげてくださいね。
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