檻の中の天使

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 大罪人(だいざいにん)の女を処女のまま処刑したら天国へ送ってしまう。  執行人のひとりである俺に『仕事の前の仕事』、すなわち、『天国行きの切符を身体から奪い取る』仕事が回ってきた。  この度収監された15の娘は父親を殺めたらしい。死刑執行人の控えの小部屋にある、古びた寝台の上で、その娘を手早く脱がせ、俺は目を見開く。  親殺しは死罪。  しかし、より忌まわしい欲望の蓄積が、娘の肌の上にいくつも、いくつも見受けられる。服を脱がせても恥じらい一つ見せなかったわけだ。  思わず俺は沈思(ちんし)する。  この娘はもう地獄を見てきているのだ。静かに天国へ送られるべきではないのか。  何もかもを諦めた様な虚無の瞳と、戸惑う俺の視線が交差する。  一体、俺はどうすればよいのだろうか。  思わず、傷だらけの裸体に、脱がせた服をもう一度着せてやる。  すると、何の反応もなかったはずの瞳が、何度か瞬(またた)く。娘の長い睫(まつげ)が微かに揺れているのは何故だろう。 「優しくされたことは、ねえのか」  娘がはじめて自分の瞳を静かに見つめる。その瞬間、俺の人生の、否、運命の歯車が、カチリと動く音がした。
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