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⑰★深い愛
シドヴィスのベッドはフカフカで、シーツの中にふわりと落とされて沈んでからすぐに浮上した。
レオンは自分の上に覆い被さっているシドヴィスの頬に手を伸ばしてさらりと触れた。もっと冷たいかと思っていたが、肌から伝わってきた温度は温かかった。
「手の怪我は大丈夫なんですか?血がにじんでいましたけど……」
「たいしたことありません」
頬に触れていたレオンの手をシドヴィスが上から掴んだ。そしてレオンの指をペロリと舐めた。
「わっ…シド…なっなにを……」
「なにって……、美味しそうだから…、舐めただけですよ。いけませんか?」
シドヴィスは心なしかいつもより鋭く尖ったような瞳をしている。口調は変わりないのに、どこか雰囲気が違うような気がしてレオンは首をかしげた。
そう言えば代表生になったばかりの頃、ディオに言われたことを思い出した。
『シドはさ、キレるとやばいから気を付けろよ』
『やばい?何がですか?』
『ほら、普段理性的なやつってさ……、タガが外れるとヤバイって言うじゃん。まさにそれ、一度しか見てないけど恐すぎだった。まぁ、アデルは女だから大丈夫だと思うけどさ』
その時は怒らせたら恐い人なのかなくらいに思っていたけれど、怒らせたつもりはないのに、なぜだかその時の台詞が鮮明に浮かんできた。
「あ…の……シド?なんか…いつもと雰囲気が違うような……」
「違うというのは…、具体的にどういうことか教えてください」
口調はいたって冷静、二重人格というほどの変化があるわけでもない。
しかし、いつもより強い雰囲気がして逆らえないような迫力があった。
「具体的にと言われると…困るんですけど、ちょっと恐い…ような……」
レオンがおずおずと言うと、シドヴィスはフッと笑った。
「そんなに期待されては困りましたね。たっぷり愛してあげようと思っていたのに……。それとも、レオンは痛い方がお好きですか?」
「いいい!言ってない!言ってない!そういうことじゃなくて……」
「じゃあどうして欲しいんですか?たくさん舐めて可愛がってあげましょうか…。それともいきなり突っ込んであんあん言わせてあげますか?」
「ひっ…違う!絶対違う性格になってる!ぬっあああ!ちょっ…ちょっと!」
私は変わらないんですけどねと、シドヴィスはレオンの手首にがぶりと甘く噛みついた。痛くはなかったがむず痒さを感じてレオンは変な声が出てしまった。
「確かに今はいつもより心を止めるものがなくて、実に心地良い気がしますね。私はものすごく怒ったり興奮したりすると、こんな状態になることがあります。きっと貴方が解き放ってくれたんですよ」
「いいっ…おっ俺はそんな…何も……」
必死に否定しようかと声に出したが、それではシドヴィスだけのせいになってしまうと思った。相手を求めていたのはレオンも同じだった。
熱量の違いにビビっているが、こんな風に触れたいと思っていたのは確かだった。しかし、レオンは自分の秘密をまだ話していない。
シドヴィスならと思ってはいたが、もし受け入れられなければ、嫌われてしまうと思うと、上手く口から出てこなかった。
決心してからなんとか声を出すと、ひどく枯れていて情けない声だった。
「……シドは俺と繋がりたいと思いますか?」
「ええ、もちろん。レオンは違うのですか?」
「…………」
シドヴィスの問いに沈黙で返してしまった。ゆっくりとベッドの周りを眺めた。綺麗に整えられていてそれを汚してしまうのが怖くなったのだ。
レオンの沈黙を否定だと汲んだのか、不機嫌そうな顔になったシドヴィスがいきなり、ぐわっとレオンの股間を掴んできた。
「だぁ!!おっ…ちょっ……シド!!」
「気に入らないですね。私をあれだけ誘惑しておいて、ベッドの上で拒否するとは……。ずいぶん紳士に待ったと思いますけど、レオンは気持ちは受け入れてくれても、体の繋がりは拒否するのですか」
荒っぽくズボンの上から擦られても、それがシドの与えてくれたものだと体が理解すると、レオンのそこは反応し始めた。
「レオン…、嫌だと言いながら体は反応してますけど……、それとも擦られれば誰にでも……」
「ちがっ…そんなこと……」
「だったらなぜこんなに大きくしているのでしょうかね?」
シドヴィスの手によって簡単に形を変えてしまった。このままだと黙っていてもシドヴィスに分かってしまうと思ったレオンは、シドヴィスの腕を掴んだ。
「だめ……!」
「……レオン、そんなに私のことが嫌で……」
「違う!違うんだ!」
このままだと行き違ってしまうとレオンはシドヴィスの目を見て必死に叫んだ。
「恐くて……誰にも言ったことがないから…。シドに…き…嫌われたくなくて……俺の秘密……」
言いながらぽろぽろと泣き出してしまったレオンを見て、シドヴィスはハッとしたような顔になって力を抜いてくれた。
「なんでしょう……?。こんなにレオンが好きなのに、なにがどうしたら嫌いになれるのでしょうね」
「俺…汚い……んです。汗だけじゃなくて……シドのベッド、すごい汚しちゃう…から」
「ああ、そういうものでしたら、構いませんよ」
「ちっ!違うんです!ちょっとどころの話じゃないんです!人と比べたことなんてないけど、俺…すごい…出ちゃうんです!」
レオンがやっと話した秘密にシドヴィスは困惑した顔から、ポカンとした顔になった。
これ以上反応を見るのが恐くて、レオンは手で顔を覆った。
「……多分、先走り…だとは思うんですけど…、一人でする時は、大きめのタオルを挟んでも足りないくらいの量が出て、もちろん汗もですけど……。触るとすぐ出ちゃうし……量も多いし……ベッドのシーツまでびしょびしょにしてしまうと思います。シドに触られたら反応しちゃいますよ…だって…嬉しいから……。でも、こんな俺を見られたら……絶対汚いって……思われちゃうから……」
部屋の中が沈黙に包まれた。手で顔を覆っているのでシドヴィスがどんな顔をしているのか分からない。
もしかしたら、気持ち悪そうに顔を歪めているかもしれないと思うとますます見ることが出来なかった。
「………なんだ」
レオンの必死の告白にわずか三文字の感想を言われてしまった。
その肯定とも否定とも取れない言葉が理解できなくて、レオンは顔を覆っていた手の力を緩めて、ゆっくりと下にずらした。
「……やっぱりレオンはひどい人です。そんな興奮する話を今まで隠していたなんて……」
「え…こうふ…?え?嘘……」
シドヴィスはにんまりと笑っていた。大好物を前にした子供みたいに、目が輝いてよだれが垂れてきそうな顔をしていた。
「あの…、なにか、誤解があるみたいですけど、俺は体液が多過ぎて…、汚してしまうという話をしていて……」
「なにも誤解はありません。私にとって、レオンの汗は興奮材料なんですよ。ましてや、アレが多過ぎるなんて……ああ、鼻血が出てきそう……」
「はい!?」
「話を聞いているだけで、イキそうになってきました。さぁ!早く脱いでレオンのものを見せてください!浴場でディオだけはちゃんと見ていて、私だけよく見れなかったのです!それだけでもショックだったのですから!」
「うぁぁ!待て!…シド!!」
気持ち悪いと拒否されるのも悲しいが、興奮されるというのも複雑な気持ちだった。ただ、大丈夫だよと言ってくれたらそれだけで十分だったが、シドヴィスはその上を飛び越えていってしまった。
ワンピースの裾はめくれ上がり、そこに手を入れたシドヴィスは下着を一気に下げてしまった。
おかげで、レオンの貧相なものがぷるりんと揺れて顔を出した。先ほどいじられたので、軽く立ち上がっていた。
「……なっ!!こっ…これは……!!」
立派なものを持っているやつにジロジロ見られるのは耐え難く、急いで手で隠そうとしたが、その手はシドヴィスに捕らえられてしまった。
「やめ…!恥ずかしいから!そんなに……見ないでくださ……」
「……わいい」
「え?」
「可愛すぎる!!嘘!なんでこんなに…ピンクなんですか!?え?ちょっ…信じられないです!可愛い!可愛すぎます!」
「ばっ…全然褒め言葉じゃないから!!」
「………食べたい」
ポタリと何かが落ちる感触がして、なんとシドヴィスは本当によだれを垂らしてそれがレオンのモノにピシャンと落ちてきたのだ。
「ままままっ……嘘嘘嘘!本当に食べるのなし!死んじゃうから!」
「まさか、本当に食すわけではありません。でも美味しくいただきます」
そう言って口の周りをペロリと舐めたシドヴィスはそのままパクリとレオンのモノを口に入れてしまった。
「うわぁぁーーー!シド…シド……!ダメだよ…ダメだって!!」
レオンの小ぶりなそれは、シドヴィスの口の中に簡単に収まってしまった。大きな口の中ではシドヴィスの舌が縦横無尽に動き回り、亀頭に吸い付かれただけでレオンは達しそうになりぶるりと震えた。
「だめだめだめ!本当に…イっちゃうってば!口の中は無理!だめだっ…あっ…シド……やめ……!!」
一応の我慢はしてみたレオンだったが、もともと早い方で、誰かに快感を与えられることなど初めてだったので、堪えきれるはずがなかった。
「んっっぁぁ!イっちゃ……ああああっっ!!」
玉のような汗をこぼして、矯声を上げ顎をそらしながら、レオンはビクビクと揺れて達した。
達した後もじゅるじゅると吸われて、レオンは強すぎる快感に涙をこぼしながら小刻みに震えた。
熱い息をはきながら快感の余韻に浸っていたら、ゴクリと喉が鳴る音がしてレオンは我に返った。
「確かに大量でしたね。私としたことが、飲みきれずにこぼれてしまいました」
「の…!飲んだの!?……嘘!」
レオンはシドヴィスの口の端からこぼれたものを直視できなかった。
まさか自分のものを飲まれるなんてと信じられなかった。
「苦いですけど、レオンの出したものなら、愛しい味がして美味しいですよ」
「だめだって……だめだって言ったのに……、すぐに出ちゃうからって……」
ショックを受けてぽろぽろと泣き出したレオンをシドヴィスはぎゅっと抱きしめた。
「可愛いですね。本当に……。いいんですよ、私が望んだことなのですから。好きな人のものなら、一滴でも自分のものにしたいのです」
シドヴィスは最初に愛の深さを教えると言っていた。どこまでの食らいついてくるような深い愛に、レオンは驚きながらも嬉しいという気持ちが芽生えてきた。
強くどこまでも求められるというのは、痺れるような快感だった。
この人の愛に溺れたいと、そう思ってしまったのだった。
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