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⑱噂
「アデル、シドヴィス様に告白したって噂、本当なの?」
ついにミレニアまで聞かれてしまい、レオンは頭を抱えた。
シドヴィスの部屋まで行って、会いたかったと告げてから、結果、口でされてしまったあの日、シドヴィスはそれ以上は求めてこなかった。
シドヴィスは愛しそうにレオンを抱きしめたまま、そのまま二人で眠りについてしまった。
まさかの朝帰りで、ミレニアが寝ている隙にベッドにもぐり込んだのでごまかせたかと思ったのは甘かった。その前段階でシドヴィスの部屋の前でイゴールと一悶着あって、その時にシドヴィスが好きだとレオンが大声で叫んでいるものだからそれを聞いた者達がこれはと騒ぎたしたのだ。
あっという間に噂は広がって、アデルがシドヴィスに告白して付き合うことになったとか、フラれたとか好き勝手言われている状態だ。
ミレニアに聞かれる前にも、さんざん色んな人に聞かれてきて、レオンは答えに困ってしまった。
「え…と、あの……告白はしたんだけどね……」
「そうよね!あのシドヴィス様ですもの!憧れる気持ちは分かるわ…。諦めきれない気持ちも分かる!なんたって雲の上のお方ですもの!大丈夫、応援するわ!ずっと思っていたら叶うこともあるかもしれないし!ねっ!頑張ってアデル!」
「あ……うん」
ミレニアの中ではレオンはフラれたことになっているらしい。シドヴィスと話を合わせる必要があるので、とりあえずそういうことにしておいた。
「出来たわ!ほら、これで完璧よ」
「すごい!さすがミレニア!私不器用だから針は苦手で……」
「いいのよ。子供の頃から好きでやっていたし。アデルの衣装くらいなら簡単に縫えるわ」
放課後の教室でレオンとミレニアは二人で残って作業をしていた。
もうすぐ一年生最初のイベントである発表会が開催される。
毎年、決まったものはなく、楽器の演奏会や、歌やダンスといったものが続いて、話し合いの結果、今年は劇をやることになった。
演目は眠り姫、意地悪な継母に騙されて毒リンゴを食べさせられて眠ってしまったお姫様を、彼女のことが好きだった隣国の王子がキスで目覚めされるというお話だ。
ちなみにアデルとミレニアはお城の侍女役だ。主要な登場人物は貴族の子息や令嬢が担当している。衣装は自分で用意するのだが、彼らはもちろんオーダーメイドだ。レオンは自分でなんとかしようとしたが、自分で縫っていたら血だらけのワンピースになってしまい、それじゃ別の話になるとミレニアに怒られてしまった。
結局裁縫が得意なミレニアに、ワンピースとエプロンを縫ってもらったのだ。
「もう……、アデルが指と一緒にエプロンを縫いつけようとしていたときはびっくりしたわよ……。もう大丈夫?血は止まった?」
「あはは…、大丈夫、布で巻いて止めたから」
変なところ豪快というか、抜けてるわよねとミレニアに呆れられてしまった。
「こっちはもう大丈夫よ。明日は残りの小道具を作りましょう」
「うん、ありがとう」
それよりと言いながら、ミレニアは少し顔を赤くしながら、レオンの隣に近づいてきた。
「私、ロニーとキスしちゃった」
「え!あの、幼なじみの!?」
真っ赤な顔で口元を手で押さえながら可愛らしくミレニアは頷いた。
「小さい頃に一度だけしたことがあるんだけど、あんなのやっぱり子供のキスね……。もう体が溶けそうだったわ……」
「へぇー、良かったね。付き合うことになったんだ……」
「アデルはキスは…、まだなのよね」
「あっ……う……」
普通に返事をしようと思ってレオンは固まってしまった。よく考えたら順番としてはそちらが先ではないのかと思ったのだ。
しかも自分だけ気持ちよくしてもらって、抱きしめられたらウトウトして爆睡してしまった。
恋人同士であれば、まずはキスを交わしてお互いの愛を確かめ合うのではないかと頭が混乱し始めた。
「ミレニア…、キスって……、普通キスから…だよね」
「え?普通って……。もしかしてその先のこと?あっ…当たり前よ。その先なんて…まだ早いわ……。まずはキスをしてから……、もう!何を言わせるの!アデルったら!」
きっとレオンがあまりに緊張していたのと、汗とかの出るものの話を自分でしてしまったので、変な流れになってしまったからだと思った。
スッキリして爆睡している場合ではないのだ。今日こそちゃんとやり直そうと心に決めて教室を後にしたのだった。
□□
代表生の会議室に入ると、ディオが一人で机に突っ伏して寝ていた。
ドアが開く音と気配で目が覚めたのか、んーと言いながらもそもそと起きて顔を上げた。
「あー…アデルか……、シドは校長室寄るから遅れるって……はぁぁねむ……」
「眠そうですね、体調悪いんですか?」
夜型だからいつも眠いんだよと言いながらディオは大きなあくびをした。
「そういえば、アデル。シドに告白したんだってな。あいつのこと好きだったのか?」
「あ……はい。実は……私の方が……一方的に好きでして」
あんな大声を出してしまった結果、ここまで噂が広がってしまい、否定するのも大変なので、自分の方が積極的に好きなのだということにした。それならば、アデルの先々についても影響が少ないだろうと思ったのだ。
「ふーん、自由だからいいけどさ、あいつモテるし、ライバル多いから大変だよ」
「そ…そうですよね。自分の中に留めておこうかと思ったのですけど、我慢できなくて……」
「……まぁ、頑張れよ。女は面倒だけど、アデルは、なんかいいやつだと思っているからさ…。シドもきっと分かってくれると思うから…」
ディオのさりげない優しさを感じて、レオンが感激していたら、ガバッと音がしてシドヴィスが部屋に飛び込んできた。
「あー、疲れました。あの狸校長、ここぞとばかりに人に無理難題を……」
頭を抱えながら入ってきたシドヴィスはレオンの姿を見つけると目を輝かせて飛び付いてきた。
「アデル!いらっしゃっていたんですか!あぁ私の子猫ちゃん。最高の癒しですー!気持ちがどんどん上がっていきます。あっ、別のところも……」
頬をくっ付けてすりすりして愛しげにレオンを抱きしめているシドヴィスを見て、ディオは驚きで口をポカンと開けたまま固まっていた。
「ど…どういうことだよ!アデルの告白を断ったんだろう?これじゃどう見ても両思いじゃ……」
あっけにとられた顔のディオを見てレオンはマズイと慌てた。アデルの結婚を目標としているのに、これではシドヴィスとアデルが付き合っていることになってしまう。
まだ、アデルの一方的な片思いであれば、切り返しがきくと考えていたのだ。
シドヴィスならきっと分かってくれるとレオンは訴える目でシドヴィスを見上げた。
「ああ、そうでした。私は今誰ともお付き合いするつもりがなくて、アデルの告白はお断りしたのでした。すみませんね、アデル」
「いっ…いえ、仕方ないことなので……」
そう言いながらもシドヴィスはレオンを抱きしめたまま離すことなく、すりすりと顔を寄せてくるのでレオンはどう扱っていいか分からずされるがままになっていた。
「シド!断ったくせに相手に期待させるようなことをするな!アデルも流されるなよ!」
「はっはい」
気のせいか舌打ちのような音が聞こえてきたが、レオンは意外とちゃんとしていたディオに怒られてシドヴィスから逃れて背筋を正した。
「いいか、二人とも!そういうことのケジメはしっかりつけろよ!付き合うんだったら付き合う!ダメならちゃんと距離を取るべきだ。シドもらしくないぞ、相手の気持ちにつけこんでやりたい放題なんて……」
その後もやはり色恋事に真面目なディオは、レオンとシドヴィスを前に正しいお付き合いについて散々語った。ディオが先に帰るまでそのお説教は続いたのだった。
□□
「そういえば、レオンのクラスは劇をやるんでしたね」
二人きりになった会議室で、うるさいやつがいなくなったと、シドヴィスはレオンを後ろから抱きしめてきた。
「あっ…はい…そうです」
ディオがいたとき抱きしめてきたのは、まだ軽い挨拶程度だったようだ。今度のシドヴィスの手は熱を孕んでいて、その手がレオンの胸の辺りを撫でていくので、レオンは変な声が出そうになった。
「演目はなんですか?レオンの役柄は?どんな衣装を?」
次々と質問を重ねながら、シドヴィスは弄ぶようにレオンの胸の中に手を入れてきた。当然詰め物が入っているのだが、シドヴィスはそれを邪魔だという風に外して下に落としてしまった。
「んっ…はぁ……眠り……姫……」
「まさか、姫役ではないでしょうね」
声色が変わったシドヴィスが強く胸の蕾を指で掴んできた。
「ああっ!!ちが……違いま……俺は…じ…侍女です」
「侍女ですか…、それは良かった。さぞかし可愛い侍女姿が見れるでしょうね。あぁ…レオンがエプロンをして…掃除を始めたら後ろから襲ってしまいそう……」
すでに後ろから襲っているくせに、その上妄想まで始めたシドヴィスは器用な男だとそこだけレオンの頭は冷静にツッコんでいた。
「衣装は私に任せてください!腕の良い職人を集めてピンク色でフリフリのエプロンと宝石を散りばめたワンピースを……」
「そんな…侍女いません…って!もう…ミレニアに…縫ってもらいました……って、ああっちょっと…あぁ…!」
「……私の楽しみを奪うとは……くっ……仕方ない。では今日はここをたっぷり可愛がってあげましょう」
レオンの乳首をねちねちと指で弄っていたシドヴィスは、体勢を変えるとレオンの乳首にしゃぶり付いてきた。
「はぁにぁぁ…!!シドぉ…だめぇ……」
「ここを私のための乳首に開発しましょう。弾かれたらイッテしまうくらいに……。可愛いここが大きくなったら、今日もたっぷり飲んであげますから…」
シドヴィスはレオンの股間に手を添えて優しく擦りだした。
その、指に翻弄されながら、シドヴィスの名前を呼んで、レオンは次々と与えられる快感に身を震わせて喘いだのだった。
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