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「春海くん」
「うん?」
「ここまででいいよ」
「……うん」
さらりと長い髪を風に泳がせながら告げる彼女に、言い淀むことのないように心がける。
一応はすんなりと声が出てきた。
及第点としか言いようがないのは間違いないけれど。
「今までありがとう」
「……こちらこそ。いくらありがとうを言っても足りないくらいだよ」
今度は少し間が空いたが、後からの言葉でそれを縫い繕う。
でも、これはボクが間違いなく、心から思っていることだった。
その意図が伝わってくれたのか、彼女は少しだけ視線をボクから外してやや寂しげに微笑むと、普段通りに戻ってまたこちらを向いた。
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