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「私はね」
そう言いながら彼女は少しだけ言葉を区切った。
「この日を絶対に忘れないと思う」
まっすぐな目で射貫かれてしまったボクは、彼女に告げる言葉を見失ってしまう。
そんなことを覚えていても、君の邪魔になるだけなんじゃないのか。
そう思うけれど、何故だかそれを告げるのは躊躇われた。
「これはきっと、記念日だから」
「記念日?」
「そう」
想像していなかった言葉が出てきたけれど、ボクは力強く頷く彼女から目が離せなかった。
ビルの狭間とは思えないほどの凪が、静かに、ほんの少しだけ渦を巻くようにして通り過ぎていく。
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