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前篇
かつり、こつ。こつり、かつん――。
わずかにタイミングが合わないボクらの靴音が深夜の街に響いて、日付変更線を越えるよりもはるかに早く、再び落ちてくる。
だけどそれは相見えることは無くって、落ちて転がって背を向け合っていた。
終電にはまだ時間があるとはいえ、残された時間はそれほど多くない。
夏純は少しだけ気怠そうにして、闇を横目に見ていた。
隣を歩く夏純との約束を果たすためには、どの辺りで口を開けば良いのだろうか。
昔の彼女に言ってしまったら間違いなく飽きられてしまいそうなものだったが、それでも何も言わずにいてくれている。
そんな彼女に甘えるようにして自分の気持ちを計りあぐねている間に、それこそ二駅分も三駅分も、熱帯夜まがいの摩天楼を縫うように歩いてしまっていた。
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