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【2・実力よりルックスよね】
【2・実力よりルックスよね】
「外野、一本バック―!」
二年生キャッチャーの指示が飛ぶと、
「おねがいっしゃーす!」
ライト、センター、レフトから、負けじの大声が幾重にも重なって返ってくる。
各ポジションには複数人がついている。
同じことが内野にもいえた我が部は、ほかの強豪校と違わず、結構な大所帯なのである。
少子化の影響からだろう、近年共学となった白菊学院大学付属白由学園だったが、創設時からは長年、女子校として歴史を刻んできた。その背景が色濃く残っているゆえか、現在、共学とはいえ、生徒数は女子が男子を圧倒的に凌駕しており、クラブも男子のみのものは存在せず、運動部においては個人的な活躍も、女子陣が断然上まわっている。
また、良好な結果を多数出せる背景には、各々の努力はもちろんのこと、球場をはじめ、屋外テニスコート、四〇〇mトラック、総合体育館など、あらゆる種目に応じられる運動施設が学園敷地内に充実している、という理由もあるのではないか。
総合運動公園に劣らずの恵まれた風景は、いくら私立校といえども珍しい。しかもそれが、都心部に存在するというのも驚きだろう。
この、スポーツに並々ならぬ力をそそいでいるのが一目瞭然の学園ゆえ、夏休み、敷地内のあらゆるところから、運動部の普段以上に威勢のいい声が飛び交っているのは、至極当然のことだった。
監督のノックバットがいい音をあげた。さすが男だけあって、まずライトに放った打球の強さは私たちの比ではない。
難なくキャッチした二年生の鋭い返球は、ワンバウンドでキャッチャーミットに吸い込まれた。
「ナイッスロー!」
バックネット前に中腰で並んでいる内野陣からの声を受け、二年生ライトは駆け足で戻ってくる。これがシートノックの締めくくりで、外野の場合はしっかりワンバウンドでキャッチャーに返さなければ、ノックは終わらない。まだ筋力の乏しい一年生にとってはつらい決まりだけど、そこはフライの距離を調節し、適切な返球を誘う。
『これは手加減を加えているということではなく、個々の持つ現時点での能力を最大限引きだすコーチング方法だ』
と、以前監督に聞いたことがある。
その彼は本校の体育教師でもあり、七年ほど前に、病気を患った老練の前任者から指導者のバトンを受けとった。
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