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思い出したくない過去を振り返り、ぞっとしていた朔太郎は大きく被りを振ると、トングで掴んだ味噌照りの良い竹串をプラスチック容器の中へ手際よく納めていく。
「サク、この焼き上がりで今日は最後だよ」
隣りにスタンバイしていた幼馴染で今回の出店の手伝いに来てくれた亜弥が手慣れた様子で容器を受け取り、創業当初から変わらない店名入りの包装紙をかぶせ輪ゴムでとめる。
亜弥とは朔太郎の大学進学に伴い一時疎遠となったが生まれた時から家族ぐるみの付き合いがあり、兄妹のような彼女はまたこうして何かあると今でも店の手伝いに来てくれる。双方の家族が、ゆくゆくは二人が夫婦となることを望んでいることも朔太郎は知っていた。
だが、亜弥とは絶対に恋愛へと発展しない。
そうならないのはそう──大学時代に朔太郎がとある男と出逢い、男性しか愛せない性癖なのだと自覚してしまったからだ。
否、それ以降誰とも恋をする気にもなれないのだから性癖以前の問題で、未練がましい、かつ恋に対して臆病なだけの男なのかもしれない。
「もうそんな時間か」
最後のひと串をパックに入れた朔太郎は、次いで炭火を止める。
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