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ゴールデンウィーク後半。都心のオフィス街にある有名商業施設の一角でマルシェがあり、朔太郎も遥々群馬から参加していた。 ありがたいことに、年々減少傾向にあった売り上げもテレビのおかげで外部での出店でも興味を持ってもらえるようになり、上向きになってきたように思う。 「お買い上げありがとうございました! またお願いいたしまぁす!」  よそ行き用の甘い接客声で亜弥が最後の客へパックを手渡し、安堵のため息をつく。 「貴重な連休に付き合わせて悪かったな、亜弥」  食品取扱用のビニール手袋を外し、髪が落ちないようにとまとめていた白タオルをはずす。少し長めである前髪が汗でぺたりと額に張りつき、朔太郎は前髪をかきあげた。 若気の至りで拡張していたピアスの痕は多少残っているが、今では素朴な勤労青年にしか見えない。 涼しい夕方の風が覆うものがなくなった額を通り抜け、少しだけひんやりする。まだまだ夏は先のようだ。 「約束通り、帰りに東京観光ができればそれでいいよ。もちろん、全部サク持ちでね」  にこにこと含みのある笑みを浮かべ、亜弥は持参のカラフルな花柄のエプロンを外すと器用にそれを小さく畳んでいく。 「相変わらず可愛げがないな」  一体どれくらいのバイト代を支払う必要があるのだろうか。一抹の不安が頭をよぎりつつも、朔太郎は肩をすくめながら幼馴染へお伺いを立てる。  その時だった。
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