7.

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でも、やっぱりいいよ。 流川が不器用なことはもうとっくに知っている。 いまは、手放したくないと、そばにいてほしい、それだけで十分なような気がする。 流川が持っている感情は、少しずつ私に分けてほしい。 流川が向き合おうとしてくれる限り、わたしはずっと流川のことが好きだと思う。 相変わらず二人で過ごす夜はいつだってしあわせで、 あのころとは違う苦しいは、流川のことがどうしようもなく好きだからだ。 あの日、出会えてよかった。 あの日、きみの涙に気づけて良かった。 彼がずっと隠し持っていたSOSに、わたしが一番に気づけて、よかった。 「―――ねえ、もう夢に元彼女登場させないでね」 「…なにそれ、」 「わたしの横で、眠りながら元カノの名前呼んでたんだよ」 「……おぼえてねえよ、」 「今度から流川の夢には、わたしが登場したいなあ」 「……あっそ、」 「ねえ、その顔って照れてるの?」 「……、」 「無言は肯定の合図だよね」 「……もう、いい加減黙って」 雲ひとつない空に三日月が上向きに浮いていた。 あの日のように空には、オリオン座が綺麗に映し出されていた。 あの日月の明かりで煌めいていた彼の苦しみは、 もうどこにも、残っていなかった。 きみの嫌いな夜はこれからも何度もやってくるけれど、 わたしはきみのそばにずっといたいと想っているよ。 そばにいるだけでいい、 一緒に過ごす時間が、あればいい。 それでもいいと、想える恋だった。 誰よりも大切だから、誰よりも幸せになってほしいと思っている。 これからも、ずっと、きみの隣で。 一緒に眠って、幸せな夢を見よう。 「……本当、厄介」 「ごめんね、わたしは好きだから」 「……俺も、」 「ん?」 「──清原が、好きだよ」
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