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・ ・ 連れてこられたのは他でもなく流川の家だった。 見覚えのある一軒家、表札に書かれた『流川』の文字。 さすがに立ち止まれば、「誰もいない」と言われて、そのまま鍵の開かれた扉の奥に押し込まれた。 強引だった。わたしは彼が人にこういう態度をする人間だってことは知らない。 流川はそんな人じゃない。 むしろ手を引くのもぎこちなくなってしまうような男だったのに。 靴を脱いで、階段を上る。 玄関には私たち以外の靴がなかった、リビングにも電気はついていなかった。 それから、また昔のことを思い出していた。 『……家に帰っても、どうせ誰もいねえんだよ』 あの頃、まだ制服を着ていて、こんなにも背中の大きくなかった彼が寂しそうにつぶやいていたことを。 「……ねえ、明日、何限?」 どうしようもない空気感にいたたまれなくなって、これからのことを想像すればどうしようもなくなって、思わず口にした超どうでもいい言葉に、流川はわたしへ振り返った。 「──3限だけど、」 続きを言わずに止めて、登っていく足にゆっくりと着いていく。 引っ張る手は相変わらず強引で、冷たいまま、わたしの気持ちなんて理解しようとも思わないのだろう。 階段を上った一番奥の部屋。 スタスタと迷いなく進む足が、扉を開けて止まる。 わたしを振り返って、冷え切った視線がまっすぐに落とされた。 「…そんなこと聞いてくる余裕、あんの?」
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