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全部、見透かされている。
口元だけ笑っていて、目はちっとも笑っていない。
開いた扉に吸い込まれるように手を引かれ、扉が閉まる。
それと同時に扉を背につけて押し付けられる唇に、わたしはもう抵抗なんて許されなかった。
強引に絡められた舌、すっとなぞられるように侵す口内にをわたしの身体は正直に反応する。
びく、と揺らした肩に気づいて、薄めに開いた瞳がわたしを見つめた。
「―――なあ、お前さ」
「…な、に」
「どんくらい、こういうことしてきてんの?」
ニヒルに上がった唇が、意地悪に三日月の形を晒す。
「……ッ、聞かないでよ、そんなこと」
「でも、さすがにヤったことはあるよね」
「……デリカシーないよ、流川」
「あーごめん、でも、あんま慣れてなさそうだよね」
バカにするように笑って、わたしの顔を覗き込む。
何も言い返せない私の、なにを探っているのだろうか。
「そんなんで、慰めるとかできんの?」
わたしを煽るような言葉。
明らかに馬鹿にするように落とされた言葉にムカついて、
油断している唇に自分から唇を押し付ければ、一瞬瞬きした瞳に隙が見えた。
「──――、」
「……どう、だろうね?」
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