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耳元で吐き出された言葉に、わかり易く反応すれば「清原、ヘンタイ」と貶す言葉が降ってきた。。
やだ、こんなの。
わたしが好きだった流川じゃない。
わたしが好きだった流川は、
わたしが話しかけたらうざったそうに眉をひそめて、それでも話を聞いてくれて、わたしのことちょっと馬鹿にして。
でもすごく優しいかったんだ、進路で迷っていたときも黙って話を聞いてくれて、授業中に当てられたらこっそり答えを教えてくれた。
知らない、知りたくなかった。
でも知ろうとしたのもわたしだった。
たった少し前に、今の彼を知ろうとした私の興味本位を今更になって後悔している。
「慣れてないわりには、敏感じゃね?」
「……っ、ふ、」
「うわ、せっま。指でも窮屈」
「ぁ、や、めて、」
「やめないで、じゃなくて?」
「…るか、わ、はやく」
「はやく?だから、慰められるの、俺じゃないの」
「そ、うだよ、」
「じゃあ、お前がねだるのはダメだよね?」
行動では、もうどうにも反抗はできなかった。
この男に勝てるのはもう、言葉でしかなくて。
精いっぱいの反抗で、ほかの女の子に並ばない私でいたかった。
「…ちが、う、好きにして、って言ったでしょ」
「…うん、そうだね」
「流川は、好きな子にも、こーするの?」
「……さあ、どうだろ」
ねえ、頭いいのに、こういう時には冴えないんだね。
明らかに動揺するように、ふい、と視線がわたしじゃないところに向いた。
そういうわかりやすいところが、今も昔も、変わらないところだよ。
流川瑞月は、わたしにちょっとだけ、弱いのだ。
「──代わりだと、思えばいいよ」
「……」
「声も出さない、顔も見せないから、…はやく、傷ついちゃえ」
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