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「……」
「…話しかけられたら誰にでも愛想笑いで返すくせに、わたしに対しては無言なの?」
「……」
「久しぶりのくせになんでこんな普通に話しかけてきてんの、とか思ってるでしょ」
「……本当に、相変わらずだな」
「うん、わたしは何も変わってないよ」
わたしは、ね。
そう意地悪に繰り返せば、きゅっと眉間にしわが寄った。
それが彼にとっての『不愉快』の表しだってことはわかっている。
その癖は変わっていないんだね、そう言えばもっと不機嫌に表情を歪めた。
「…大学で見かけても、知らんぷりされるし、わたしのこと覚えてないのかなって思ったけど」
「……」
「そんなことないんだね」
「……普通に、忘れるほど腐ってないから」
わたしと彼はただの中学の同級生で、それ以下も以上もない。
普通に話すクラスメイトで、卒業してから特に一切連絡も取らなかった、その程度の関係だ。
それでも、わたしは。
あの頃のわたしにとって、流川瑞月という存在は、きっと他の人よりも、大きかったと自負している。
「…ねえ、どうして、」
「……」
「どうして、変わっちゃったの」
「……」
「るかわ、」
「……うるせえよ、」
「―――ねえ、どうして、泣いてるの?」
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