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触れるだけのキスだった。 何の感情もないキスだった。 暖かさの何も感じない、凍っているような冷たさだった。 わたしが知っているその行為は、もっとあたたかくて、優しくて、しあわせになるものだ。 流川瑞月がわたしに押し付けた感情の中に、そのぬくもりは一ミリも感じられなかった。 その反対に、異様に自分の胸が締め付けられていくのを感じた。 息が止まるように、このまま時が止まってしまえばいいんじゃないかなんて、都合のいい気持ちがふらっと現れるようだった。 心臓がとくとくと動きをはやめていく、そんな音から耳をそむけたくなって。 彼からもらうこの行為に、心から満足できる日はきっと一度もやってこないんだろうと悟った。 なんの反抗もなく受け入れたわたしをみて、遠慮なく彼の舌が口を割って侵入してくる。 「…ん、ぅ、」 零れた吐息が恥ずかしくて、うっすらと開いた瞳の先で絡んだ視線が、煽るように細目で笑っていた。 この行為に、この人ほど慣れていないのが見透かされそうだった。 悔しくて必死にしがみつくようについていけば、面白そうに見下ろして、目尻だけが嘲笑うかのように皺をつくっていた。 「…『慰める』って、こういうことでしょ」 「……ッ、」 「清原(きよはら)、」 「……っ、なに、」 「―――ねえ、これだけで終わりなわけ?」 ああ、本当に。 あの頃の、流川瑞月を返してほしい。
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