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「話は聞いておる。が。難しい」
レンティーヌが謁見を申し出た国王は、あっさりとそのように言い放った。さすがにレンティーヌも端から断られるとは思ってもおらず、一度目を瞬かせた。
「陛下」
理由を促せば、フレーティア国王の顔のまま、眉間に皺を寄せてレンティーヌの顔を見た。
「テーランス公爵令嬢の話は、理解しておる。だが、3人以上の魔術師を他国に出す事は難しい。そなたなら知っておろう。禁忌の双子の話を」
思いもかけない内容が出てきて、レンティーヌは返答が遅れた。
「……それは、はい」
魔術師をマルケイア王国へ行かせる事と、王家の禁忌の双子の話がどう関わって来るのか、見当もつかない。
「王家の双子の事は、代々の国王が王位を継ぐ時に、噂程度ではなく、きちんと聞かされる。王家に近い貴族の間でも、そのような双子が居たらしい、というあやふやなもののはずだ」
「わたくしが耳にしているのは、真偽も不明の噂程度でございますが、実在する、と?」
「そうだ。実在した。これ以上は話す事は出来ぬが、問題は、過去の事では無い」
「では……」
「それ以上を口にはするな」
レンティーヌは久しぶりに叔父の威圧を浴びて口を閉じた。過去のことでは無いのなら、それはこれから双子が生まれて来る可能性が有る、という事。
「それと、魔術師を他国に出す事の関係性というのは……」
「ふむ。そうだな。一つ、言えることは複数の属性を使える者がいつ現れるか分からないから、という事か」
複数の属性……つまり、土だけ、水だけではなく、両方、或いは風と火という全ての属性を使える者が居る、と? 禁忌の双子とは、もしやそのような存在? レンティーヌは、そこまで思考を巡らせてその恐ろしさに戦慄した。
そのような存在が一人でも居る事は恐ろしいというのに。二人も居るとなれば。
禁忌の双子がどのような存在なのか、解らない。王家にどのような影響を及ぼすのかも。
しかし、万が一王家に叛旗を翻すような存在として生まれて来るのなら……?
しかも、“王家”の双子と言われているが、国王陛下夫妻の子として産まれて来るかも分からない。もしかしたら、王家の血を引いた家に生まれて来ないとも限らない。……国王陛下が懸念されているのは、そういうこと……?
双子が王家に叛旗を翻すような存在ならば。複数の属性を扱える魔術師ならば。王家を守るためにも、何人もの魔術師を他国に出すことは出来ない。
でも。
陛下が懸念することは解るけれど。
……現在、王家の血を引いた家で子が産まれそうな家が在ったかしら。
レンティーヌは様々に思考を巡らせ、そしてそこに思考が辿り着いた。
抑々の話、子が産まれそうな家が無ければ、別に警戒する必要も無いのでは、と。
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