ノルマ未達の死女神

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ノルマ未達の死女神

 ここ「死神庁」には、たくさんの死神が勤めている。  人類の死を司るのが仕事だ。その全体数をコントロールし、適正な人数に導く大切な役目を担っている。 「アザレア、ちょっと来い!」  何事かと、アザレアと呼ばれた女の死神は、顔を引きつらせて、課長ロンバルディアの顔を見た。 「ハァ、やっぱり」  アザレアは、深く大きく溜息を付いた。  彼女は、「突然死課(サドンデスか)」新人の「死女神(ヘル)」である。新人というが、若い訳ではない。死神には寿命という概念がなく、あるのは「期限」だけである。何年か後に、期限が来ると、もう一度若返ってやり直すという作業を永遠に繰り返す。  死神庁は、人間の「死」を司る役所だ。  その死に様によって「寿命死課」「病死課」「突然死課」などに分けられている。  一番人気は寿命死課で、寿命を迎え、安らかに死んだ人を迎えに行く役目で、極めて楽な仕事だ。病死課は、病気で苦しむ人間を「そろそろだな」と見極めて死を与える課で、これも中堅どころが好む仕事である。  だが、アザレアのいる突然死課は、死神たちに一番人気のない課だ。  何らかの理由で、まだ寿命があるのに、生きることを諦めた人間を死へ導いてやるという死神も嫌う過酷な仕事なのだ。  通常は、バリバリの肉食系男子死神が配属されるのだが、どういう理由だか、この草食系の女子死神が配属されてしまっている。  
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