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地獄庁行きは絶対イヤ!
課長席の前に立って、しょんぼりと下を向いていると、課長の怒声が再び響いた。
「今月、今日までなのに新規ゼロだぞ。どうなってんだ? マジでやる気あんのか!?」
バンッ
課長が思いきり机を叩いた。人間の世界のブラック企業と見間違う光景だった。アザレアは口を尖らせて、体をくねらせた。
「あ、ありますけど。なかなかいい案件が見つからなくて」
アザレアは、顔を引きつらせながら頭を掻きつつ、照れ笑いをした。
「お前、案件だとかなんだとか言ってる場合か? このままだと、地獄庁に行かすぞ!」
地獄庁ー。泣く子も黙る無間地獄である。
その仕事は、地獄送りにされた人間たちが悶え苦しむ様を見続け、逃げ出すのを再び地獄に送り返す過酷な仕事である。
アザレアは、顔を真っ青にして震えあがった。
「地獄庁って、文字通り地獄だから絶対イヤです!!」
「うるせえ! だったらさっさと下界に行って、魂取ってこい! 今日中にな。できなければ、地獄庁行きだ!」
課長の怒号が、寿命死課に響いた。
「わ、分かりましたよ。行きますよ、行けばいいんでしょ! ていうか、昨日も行ったばっかなんですけどね!」
アザレアは、捨て台詞を残して、課を飛び出した。
「たく、今日中なんて無理ゲーなんですけど!」
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