「突然死課」の役割

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「突然死課」の役割

 突然死課の死神の役割は、人間の姿に化けて「もう生きる希望がない」「死んでしまいたい」と思っている「無気力者」もしくは「自殺志願者」の背中を押してやり、「突然」に魂を奪う事である。  魂の奪い方は、色々な方法がある。  その人間を絶望させ、自ら命を絶たせる方法。  または、精神を錯乱させ、事故に遭わせる方法。  さらには、犯罪者を操作して、殺させる方法までもある。  ただし、死神が直接手を下すことは厳禁である。  仮に、それを行ってその者の魂を奪ったとすれば、それは死神にとって「最も忌むべき最期」を迎えることになると言われているが、それが一体どんな結末を迎えるのかは、誰も知らなかった。  一人として、死神庁に戻って来たものがいないからだ。  そして、人間の世界「人界」に行く際には、死神はその姿を見られてはならず、必ず人間の姿に化けて行かなければならない。 「えっと、今回は18歳の女子高生に化けよっと」  毎回、ターゲットによってアザレアは姿も年齢も変える。  見た目は、普通の女子高生にしか見えないうえに、いわゆる死神の鎌などという目立つものは持っていない。  ただ、突然死課の課員には、「無気力レーダー」という特殊装置を持たされている。見掛けは、スマートフォンに偽装してある。  これによって、ターゲットを絞るのだが、ゼロを起点にプラス1万からマイナス1万までのポイントがある。 「イヤだな……。まだ生命力ある人間の魂を奪うのって、結構大変なのよね」  それだけに、突然死課が獲ってくる(タマ)には、価値があり、死神庁の上級組織でも、高く評価されている。 「よし、降りるわ!」  女子高生に変化したアザレアは、死神庁の庁舎を出て、下界へのゲートをくぐった。  
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