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家の外に出て、車に乗せようとしたとき、｢りこちゃーん！｣と遠くから彼女を呼ぶ声がした。
この声は、この辺りの若い主婦達にイケメンだと言われている陸人のものだ。
｢さ、早く車に乗ろうか｣
俺は陸人の声に気づかないふりをして、助手席の扉を開け、莉子のシートベルトを締めてあげる。
｢ねえ、りこちゃん今日とっても可愛いね。どこかに遊びに行くの？ 俺、りこちゃんに見せたいものがあったから迎えに来たんだけどな｣
空気を読まず、陸人は後部座席に座る莉子を覗き込んでくる。
莉子は陸人を見ると、いつももじっとする。好きなんだろうなと思うけど、俺は気づかないフリをすることにしている。
｢悪いね。莉子は今日、俺と出かける予定があるから。危ないから、そこに停めんなよ｣
俺は陸人に冷たく言い、後部座席のドアを閉めた。陸人が車から離れたのを確認してから、エンジンをかけた。
窓に手のひらをくっつけ、陸人の姿がだんだん小さくなっていくのをずっと見つめている彼女がバックミラーに映っている。
莉子の気持ちを知っているだけに、僅かな罪悪感がある。
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