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煌びやかなシャンデリアが飾られたホテルのロビーは騒然となっていた。
「あなた!大丈夫!?あなた??」
もがき苦しみ、崩れ落ちるように倒れ込んだ崎村様の傍に座り込み、その様子を青ざめた表情で奥様が見つめている。
「お願いします、誰か!」
突然の出来事に泣き叫んでいるのは崎村様ご夫婦のご息女で、そしてその隣ではご息女に寄り添うようにしてその旦那様が立っていた。そしてロビーにいた他の宿泊客がその様子を固唾を呑んで見守っている。
「どうしよう……どうしよう…………」
プロ意識に欠けると言われてしまえばそれまでなのだが、このホテルに勤務してまだ2ヶ月の私・高菜しおりはただただオロオロすることしかできなかった。救命救急講習は受けているものの、いざというときになると理論に体がついていかなかったりするものだ。
「崎村さん。聞こえますか?崎村さん?」
先輩ベルボーイの田宮さんが男性の頭の隣で座り込み、耳元で大きな声をあげる。
「いかん。意識がない。AEDを用意して」
田宮さんがそう指示を出すと同期の横手君が頷き、機材の前へと駆け足で向かっていく。
「高菜さん」
「はい」
私が返事をすると、田宮さんは今までにないくらい険しい表情を見せた。
「救急車をすぐ呼んで。そして君は外で待機。救急隊員の人達が来たらすぐにこちらへ誘導するんだ。一刻を争う。急いで!」
「わかりました」
私はそう言うと急いで携帯電話を取り出した。
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