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ホワイトデーss
※仲直りして同棲を始めてから2回目のホワイトデーのお話です(バレンタインは1回目なのに前後してすみません💦)
※完結お祝いに篠宮さまからイラストをいただき、2人のことが書きたくてたまらなくなったのでそのノリで書きました!!ふわふわ幸せなお話になってたらいいなと思います(>人<;)
「志真。」
柔らかな声に鼓膜をゆらされて、くすぐったいようなむず痒いような刺激に身を捩ったら、自分の身体の一部ではないしあわせな温もりに手が触れた。
ゆっくりと瞼を開き、一握の不安を抱きながらも幾度か細目で瞬きを繰り返す。
やがて滲んでいた視界がはっきりと像を結び出し、最愛の人の愛しげな微笑みが視界をいっぱいに満たして。
安堵で自分の頬がほっと緩むのがわかった。
この幸せな朝の光景を、一年半以上続けてきた今でもまだ夢のようだと思う。
今も少しだけ怖い。もし夢だったらどうしようか。
「ん……、奏多さん、おはようございます。」
言いながらもぞもぞと両手を伸ばし、半ばぐずるような形で筋肉質な身体に抱きついた。まだ触れ合っていたいから、もう少しだけこのままで。
しばらくそうしていると、額にそっと柔らかな感触が降ってきた。見上げれば、端正な唇が柔らかく緩み、切れ長の瞳が眩しそうに細められている。
「朝は甘えただね。でも、食事が冷めてしまうからそろそろ起きよう?」
そのまま甘く囁かれて、そういえばとても良い匂いがすることに気がついた。
「ん……ごはん……?」
「うん。志真の好きなビーフシチューのブレッドボウル。」
「起きます!」
「素直でかわいい。」
たしかに俺の大好きなメニューだ。反応して一気に起きあがろうとした俺を、奏多さんがくすぐったそうな声で笑う。
でも、朝ごはんにそんな手のかかる料理を作ってくれるだなんて、今日は何か特別な日だっただろうか。
……まあ、それを考えるのは後でいいか。今は冷めないうちに起き出さなければ。
「かわいくは……あれ、何か手に…… 」
布団をばさりと畳もうとした手に、どこか違和感を覚えた。
首を傾げながら自分の左手に目をやると、何故か薬指に見知らぬ指輪が嵌められている。
まさか、これは……。
「あの、この指輪、奏多さんからのプレゼントですか……?」
それ以外あり得ないとわかっていながらも、確信が欲しくて尋ねた。
内心では、この指輪が彼が俺に意味を込めて贈ってくれたものだとはやく喜びたくてたまらない。
「うん。……その、重いかな?一応、ホワイトデーも兼ね「ありがとうございます!!お揃いなのも、嬉しいです。」
堪えきれずに、彼が言い終わる前に飛びつくようにして抱きつく。
途端、少し不安げだった彼が、春の日みたいに笑った。
彼のふわっと笑う瞬間は、いつもとても綺麗だと思う。
その笑顔にひどくときめかされて慌てて手元の布団をばっと被った俺は、そのまましばらく彼に揶揄われ続けて。その揶揄い方が追い討ちをかけるようにときめかせてくるから、布団から出た頃にはせっかくのシチューが冷めてしまったのだった。
ちなみに指輪のままオフィスに行ったことを同僚に揶揄われるのは、もう少しだけ先の話である。
(イラスト:篠宮様)
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