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もう一度、優しく彼の身体が覆い被さってくる。
「志真、入ってもいい…?」
抱きしめたくなるほどの切ない声音に驚いて彼の表情を仰げば、漆黒の瞳は熱を孕む一方で泣きそうに揺らいでいた。
俺からしたら肯定以外考えられない質問だけれど、彼はどこか不安げに唇を歪めている。
ひょっとしたらまだ気にしているのだろうか。
俺を突き放して辛い思いをさせたことか、あるいは、俺に辛い思いをさせたくなくてずっと黙っていたかった事実を明かしてしまったことを。
側から見たら、そんなにも優しい理由で迷う人などこの世にいないと笑われるかもしれない。
でも、奏多さんならありえる話だ。
この人の愛はどこまでも臆病で優しい。
「……もしかして、傷つけたから抱く資格がないとか、考えてます…?」
「どうしてわかるの?」
真っ直ぐに俺を見つめていた瞳が大きく見開かれて、不思議そうにぱちぱちと瞬く。
俺はなんだかくすぐったくて、これから一番恥ずかしいことをするような状況なのに、少しだけ頬が緩んだ。
……だって、わかるよ、奏多さん。貴方が俺のことを俺以上にわかっているように、俺だって貴方のことを、たくさんではないけれど、他の人よりは少しだけ知ってるよ。
心の中で考えながら、全ては言葉しない。
代わりに彼の頬に手を伸ばし、手のひらをそっと添えながら首を傾げて見せる。
「ふふ、どうしてでしょう?……でも、もう迷わないでください。俺も貴方が、えっと、……その、欲しっ……あっ、やっ、そんな格好は、だめっ……んっ…ぅっ…。」
“欲しい”、と言い切る前に頷いた途端に両足を高く持ち上げられて、とっさに性器が晒されないように力を込める。
けれど、すでに足の間には彼の身体が入り込んでいて、閉じることが叶わなかった。
内腿から爪先までの間を長い指の先でつうっとなぞっていく。
その刺激は背筋を伝って身体中を巡り、ぞくりと震えるような感覚のせいで全身が弛緩した。
力が抜けたせいであっけなく大きく足を開かれて、彼の雄が後孔にあてがわれる。
そのまま、透明な液の溢れた熱い屹立の先端が、表面を何度も擦っていった。
「それ、恥ず、かしっ… 」
高く足を持ち上げられているから、彼の雄が俺の恥ずかしい部分に擦り付けられている様子も、大きく開いた足の間から覗く俺の屹立した性器も、それを見つめる彼の熱っぽい視線も全て見えてしまう。
「恥ずかしがる様子も可愛い。」
「んっ…!」
顔を赤くした俺を微笑った彼は、そう言いながら、所在なさげに浮いている俺のつま先にそっと口をつけた。
その僅かな刺激すら、驚くほど大きな刺激に変換される。
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