18. 蜜夜

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焦ったさに身を捩っても、擦り付ける手はなかなか止まない。 何度もこの行為を受け入れてきたなんて、過去の自分の精神に驚いている。 ただ羞恥に悶えながら入口への愛撫を受け入れていると、しばらくして“いれるよ”、という言葉が聞こえ、それを合図に緩んだその場所からつぷりと彼の熱欲が侵入(はい)ってきた。 胸への愛撫をされた頃からずっと彼の侵入を望んでいたそこは、少しも拒むことなく、むしろ呑み込むようにそれを受け入れる。 「ねえ志真、すぐに飲み込んだね。もしかして、僕がいない間自分でした?それとも他の誰かと…。」 ナカへの刺激に追い討ちをかけるように色を帯びた声で囁かれ、身体が跳ねた。 しかしすぐに正気を取り戻し、反論する。 「して、なっ… 」 確かにそうは思えないほどあっさりと受け入れてしまったが、もうずっと指の侵入すら許してこなかった。 この2年間他人に触れられたことはおろか、自慰行為の際に使ったこともない。 「…ああ、泣かないで。指でした時はキツかったから、わかっているよ。…ただ、ここにいたことがあるのは僕だけだって、君の口から聞きたくて。 ねえ志真、愛してる。この世の何よりも大切に思っているよ。」 必死の主張を受けた彼は、すぐに意地悪な言葉を否定し、臆病な懇願と共に俺の頭を撫でてくれた。 優しい言葉に胸が熱くなる。 官能的な熱とは違う、もっと感情的な、彼への愛でできた熱さ。 それが性的なものと合わさって、脳がぐちゃぐちゃに蕩けて。 「かなたさん、だけっ…。…だけ、…んっ、ですっ!!…ぁっ… 」 喘ぎ声の隙間から、彼を喜ばせるための言葉を必死に紡いだ。 とたん、中心を満たしている彼の熱がさらに大きさを増す。 「…っ、愛しくてっ…、敵わないっ…、ねっ 」 何かを堪えるような声と共に、彼の額に浮かんだ汗が落ちてきて、俺の頬を濡らした。 緩やかに律動が加速していく。 浅い部分の弱い場所を雁首で抉ったり、中を押し付けるように擦ったり。 けれどその動きは決して彼の独りよがりにならない。 俺の中を傷つけずに快楽だけを植え付けてくれるその優しさに、大切にされているのだと痛いほど理解させられて、自分の奥がぎゅっと収縮するのがわかった。 きっと、久しぶりだから優しくしてくれているのだろう。 …ねえ奏多さん、あなたが好き。ただ、本当に、愛しくてたまらないんだ…。 生理的な涙が瞳から溢れ、下腹部に蓄積する熱を逃すように何度も吐息で喘ぐ。 達する瞬間は、指をしっかりと絡ませながら両手を強く繋いで、互いの熱を分かち合うような深い口付けと共に緩やかに訪れた。 2人とも、同時に。
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