ピロートークはバスタブの中で

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ピロートークはバスタブの中で

優しく手加減して抱いてもらったおかげか、達した後も意識を失うようなことはなかった。 生まれたままの姿で彼の身体に抱きしめられている今が、少し恥ずかしいけれど嬉しくてたまらない。 脳がふわふわと酩酊して、雲の上を揺蕩うような曖昧なしあわせに包まれている。 「志真。」 大好きな人の声にひどく愛おしそうに名前を呼ばれた途端、その曖昧な幸せがはっきりとした形を帯びて、大きく膨らみすぎて泣きそうになった。 「かなた、さん。」 応えようと紡いだ彼の名前は、涙を堪えたせいか少し舌足らずになってしまう。 言いながらぼうっと彼の顔を見上げれば、やさしい眼差しが俺を映して伏目がちに淡く微笑んだ。 「愛してるよ。頑張ってくれてありがとう、志真。」 キャラメルみたいな声で言う。 続けて頭を撫でられたから離れ難くなって、広い背中に腕を回してしがみつくようにぎゅっと力を込めた。 「俺も、かなたさんが、いちばん、すき。」 言葉にしたらくすぐったくてたまらない。 恥ずかしくて心臓がうるさくなったから、顔の赤さを悟られたくなくて彼の胸に顔を埋める。 すると、大きな手が頭を撫でて、それから(ひたい)に触れるだけの口付けが降ってきた。 「それは嬉しいな。志真の口から聞くと、何度でも嬉しい。」 「これからは、たくさん、いいます。」 「じゃあ僕はその倍言うね。好きだよ、志真。」 「じゃあ、俺は…… 」 それよりもっと、と言おうとしたけれど、そんな権利はないように思えて口をつぐんだ。 俺は、こんなにも愛してくれた人を信じきることができなかった。 ただ過去の自分の行いが悲しくて、まるで言葉が続かない。
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