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「そっか、そんなふうに考えてくれるんだ。……ねえ志真、僕も脱ぐから、そのまま一緒にバスタブに浸かってもいい?少しゆっくり話したくて。」
「……そうしたら、なんだか昔みたいですね。」
「うん。したあとはいつも一緒にお風呂に入っていたね。」
それから奏多さんが服を脱ぐと言って脱衣場の方に言っている間に、俺は中の精を急いで掻き出して湯船にお湯を張り始めた。
戻ってきた奏多さんに少し不服そうな表情をされたけれど、彼の指だとどうしようもなく感じさせられてしまうから仕方がない。
そういえば昔もおなじようにしていたっけ。
考えて、幸せな笑みが溢れる。
俺が笑うのを見た奏多さんも、とても嬉しそうだ。
笑い合いながら、湯船に入る。
湯船の中では本当に色々な話をした。
奏多さんの膝の上に乗せられて、温かな湯の中で彼の胸に背中を預ける体勢で、離れている間に互いがどんな時間を過ごしたのかを長く長く語り合った。
離れていた間の隙間を埋めるように、何度も何度も口付けながら。
「…ごめんね。」
話を終えて緩やかな沈黙が流れた時、ふと、奏多さんが苦しげな声で呟いだ。
「何がですか?」
「黙っていたからもっと傷つけたんだなって。」
「そんなこと、もういい……いや、やっぱり良くないです。」
「……ごめん… 」
「もう、だめですよ。絶対だめです。俺が傷つくとしても、隠し事は禁止。だって、痛みなんて一緒に分け合うものでしょう?それが支え合うってことでしょう…?」
「うん、……うん。」
ぴちゃり。
湯の音が小さく鳴って、後ろから優しく抱きしめられる。
彼の体温を宿した滑らかな肌の感触が、とても心地よい。
それから彼は何も言わなくなったけれど、しばらくしてすすり泣くような声が聞こえてきた。
「格好悪いな、今日は随分と泣いてる気がする。」
掠れた声で彼が言う。
「……お互い様、です。」
彼の方を振り向いて口付けながら、また俺も泣いてしまった。
長い長い夜が明けた後の、優しくて温かい朝の話だ。
窓の外を見れば、朝を告げる柔らかい光が浴室一杯に注いでいる。
まるで、今の俺の幸せみたいに。
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