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バレンタインss
※大遅刻のバレンタインssです。遅れてすみません💦
※2人は現在同棲しています。奏多は現在営業所の課長ではなく、元々やっていた回路設計の仕事に戻っています。
※特に山も落ちもありませんが久しぶりの執筆で誤字だらけの可能性がございます、、、。申し訳ありません(>人<;)
(奏多side)
がちゃり。
玄関から聞こえたドアの開く音と共に、“ただいま”、と柔らかな声が響いてきた。
料理の手を止め、僕はその声の方へと歩みを進める。
玄関まで行くと、分厚いコートを纏った可愛い人が、そこだけ春が来たようにぱっと笑みを浮かべた。
世界中のどこにいても、僕を見つけた時、志真は決まってこうして嬉しそうに笑ってくれる。
職場では大人びた表情を崩さないのに、僕の前でだけ子供っぽい振る舞いを見せる、その様子が愛おしくてたまらない。
「おかえり、志真。仕事お疲れ様。」
そっと手のひらで頭を撫でれば、気持ちよさそうに目を細め、委ねるように頭を押し付けてくる。
「んー…、奏多さんも、お疲れ様でした…。」
返ってきた声は、まるで融けかけのチョコレートのようにふにゃりとふやけていた。
「あはは、志真、融けちゃいそう。ご飯より先にお風呂入る?」
「ごはん、おふろ…… 」
僕の言葉をただおうむ返しにして、ことりと首を傾げる。
今日はだいぶ疲れているらしい。
これ以上疲れさせないようにとせめて荷物を預かると、それは予想以上にずっしりと重たかった。
「ご飯はあと10分くらい。それより、かばん、重いね。」
「実は営業所の方からだけじゃなくて外回りの行く先々でもチョコを……あっ!!」
言っている途中で、志真が素っ頓狂な声を漏らす。
彼はそのまま目を丸く見開いて、何か大切なことを思い出した子供のように両手で口を塞ぎ慌て出した。
「どうかした?」
「奏多さんに買ったチョコ、……電車で普通に膝に乗せてたから、融けてしまったかもしれません……。」
落ち込んだ様子で言いながら、彼はカバンの中をがさごそと探り、底の方から取り出した箱を僕に渡してくれる。
「これ、僕に……?」
チョコレート、と言っていたが、どうしてチョコレートなのだろうか。
少し考えて、今日がバレンタインだったことを思い出す。
男しかいない仕事場なのでそんな雰囲気はなく、すっかり忘れていた。
そうか。バレンタインか。
もらえるなんて、嬉しいな。何より彼が一生懸命選んでくれたであろうことが幸せでたまらない。
「あの、……融けてるかも、です。」
「気にしないよ。志真からのプレゼント、大切にするね。」
「でも、融けて……んぅっ…!」
融けてる、融けてると何度も落ち込んだ表情で言う様子が可愛くて、思わずその唇を塞いだ。
僕としては、融けていても本当に全く気にならない。
「志真がくれたことが重要なんだよ。たとえ丸焦げのクッキーだとしても嬉しい。」
真っ赤になってこちらを見上げる彼に、甘くglareを放ちながら言い聞かせた。
「それは、言い過ぎです!丸焦げって…!!あははっ、お腹痛い…… 」
彼は何故かツボに入ったらしく、口を押さえて大笑いしている。
その傍らで、僕はそっと昔の出来事に思いを馳せた。
あの日、甘いセックスの後で君に別れを告げたあの絶望に満ちた日が、今では嘘みたいに遠く思えている。
ひどく冷たい雨の降る1日だった。
バレンタインが間近に迫っていて、上品な紙袋に入った僕好みのほろ苦いチョコレートが、クローゼットの隙間から覗いていた。
最愛の人の手を自ら振り払ったあの瞬間を思い出すたび、今でも心臓を素手で握りつぶされたような痛みに襲われる。
それでも、その痛みすら愛しいと思えるほどの幸せが今は日常になった。
だって隣で君が笑っている。
瞳に僕の喜ぶ姿を映し、頬を薄紅に染め、柔らかに唇の端をゆるめて。
どんなチョコレートよりもその笑顔が贈り物に思えると、そんな本音を言ったら君は拗ねてしまうかな。
想像して、くすりと笑ってしまった。
こんな幸せな日々が、もう半年以上も続いている。
ハッピーバレンタイン。
全ての人が、幸せになれますように。
〜Special Thanks〜
あーるさん(レビュー感動して泣きました!!ありがとうございます😭💕)
あとがきのペコメでリクエストを入れてくれた皆様(2人のお話もっと読みたいと言っていただけて嬉しかったです😭💕)
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