第1章(1)ジャナフside

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「も〜!いつも"起こして"って言ってるのに!」 「ははっ、悪い悪い。いつも気持ち良さそうに寝てるから、なんか付き合わすの悪くって……」 拗ねるボクに、困ったように微笑みながらそう言う彼もなんと夢の配達人。 しかも、最近起きた"ある事件"がキッカケで一躍時の人となった、今世間を騒がせている夢の配達人の一人だ。 ドルゴア王国の第一王子サリウス様の求婚を拒んだアッシュトゥーナ家に代わって、国の繋がりと和睦を結ぶ為の"代役"を買って出た人物ーー。 サリウス様はボクの国ドルゴアを将来背負って立つすごい方。民衆からも慕われている文武両道で、非の打ち所がない人……。 そんなサリウス様と"勝負"したい、なんて言う奴は正直最初どんな怖いもの知らずと言うか、無謀な奴かと思ったよ。 でも、ツバサ本人からレノアーノ様と幼馴染みである事。それから、彼女との約束や想いを聞いて、ボクは感動しちゃった。 それに今は、"無謀だ"なんて思わない。 「ジャナフ。 丁度いいや、タイム計っておいて」 「え?走るの??」 「うん。サッと一周してくるからよろしく」 ツバサは毎朝のように訓練、通称"朝練"とやらを欠かさない。そしてボクはその朝練に立ち会う度に、毎度毎度彼の凄さに驚かされてしまうんだ。 「はいは〜い。 じゃあ、行くよ。よ〜い、……スタート!」 教えてもらった掛け声と共に渡されたストップウォッチのスイッチを押すと、ツバサはものすごい瞬発力でその場を駆け出す。 速いな〜ホント。 しかも、綺麗なフォームで……走ってるって言うよりも翔んでいるみたい。 ツバサは関節が柔らかくて、柔軟性がすごい。前屈すれば地面に手の平がピッタリつくし、開脚すればそのままペッタンって地面に尻餅を着けるし、更にそこから身体を前に倒せば胸まで地面に着く。 最初見た時は怖すぎて、思わず「ツバサ!キモいッ!」って言っちゃったよ。 身体がバネみたいで、それとバランスの良い筋肉がまた更にすごい瞬発力って武器を生む。 最高責任者(マスター)さんに言われて、ツバサと対決した腕相撲。見た目の筋肉量、腕の太さなら断然ボクの方が勝ってた。……でも、「GO!」って掛け声を聞いて力を込めようとした時には、ボクの手の甲は机の上に倒されてたんだ。
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