序章

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序章

ふざけているーー。 薄暗い、書庫のような空間。 そんな感情でいっぱいの心を封印するかのように、"ある者"は読んでいた書物を本棚にグッと差し込んだ。 それは物語。 子供が楽しむ為に美しく描かれたお伽話でした。 人間に恋をした天使が天界から舞い降り、その想いを成就(じょうじゅ)させ、幸せに暮らす恋物語。 ……しかし。 それは言い伝えを聞いた人が美化させて出来た、現実の過去とは全く違うものでした。 人々は幸せが溢れる展開のこの物語を読んで、不快な気持ちになる事はないでしょう。 けれど、「ふざけている」そう思った"ある者"は不快に感じ、そして誰よりもそう思って当たり前なのです。 何故ならこの"ある者"こそ、物語に登場している天使。 そう。 天使(自分)の過去が、ありもしなかったものに書き換えられ記されているからです。 姿形は人と似ていながら、透き通るような白金色の髪と瞳。肌は雪のように色白で、男性とも女性とも受け取れる、中性的な美しい顔立ち。 しかし、浮かべている表情は人が天使と呼ぶにはあまりにも険しいものでした。 ーー天使の血を持つ者は、 真に愛する者とは結ばれないーー。 全てはこの天使から始まりました。 天国でも地獄でもない灰色の世界から抜け出せないこの天使が抱く強い呪いのような想いー(ねん)ー。それが"天使の血"を受け継ぐ者達へ、災いとなって襲いかかるのです。 人間達(裏切り者)も、天使の血を持つ者も、皆不幸になればいい。 もう時期"(うつわ)"が成熟し、使える様になるしなーー。 天使の心を救い、(ねん)を断ち切らない限り終わらない運命。 果たしてこの天使と、天使の血を受け継ぐ者達の末路は……。 …… …………。
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