魔物を連れた僕はダンジョンで遭難した冒険者のレスキューを生業にしている。

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「目を覚まされましたか? 暗いところから急に明るいところに出たからか立ち眩みを起こして倒れてしまったんですよ」 「そう……だったんですか」 「はい、これで依頼達成となります。ああ、さっきお預かりした杖、お返ししますね」  にっこり笑って杖を渡してから軽く服のホコリを払う。さて、帰ったらギルドで報酬を貰って今日は帰ろう。  久々に深部まで入ったから疲れた。夕飯に何か美味しいものを買って…… 「あ、あの」 「はい」  くるっと振り返ったところで突然目の前が真っ暗になった。 〇  今日もサイさんは私を迎えに来てくれた。転移魔法を使わず、入口から入ってきて、数多の魔物を倒しながら進んできてくれたのだろう。私というお姫様を救いだす、王子様のように。 「サイさん、今日もありがとうございます」  私の忘却魔法を受けて倒れたサイさんの顔を覗き込む。銀髪に赤い瞳、白い肌の整った顔立ちはまさに理想の王子様だった。  普段の穏やかな雰囲気の彼も素敵だけど、さっきあの魔物に杖を向けた時に見せた怒りを孕んだ声もかっこよかった。何度も会っているけれど毎回毎回新しい発見がある。
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