魔物を連れた僕はダンジョンで遭難した冒険者のレスキューを生業にしている。

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「おい、サイ、どうした!」 「そうだった、こいつの処理もしないと」  サイさんの横でモゴモゴと動いている鞄の隙間から杖を差し込む。「私の記憶を消せ」と魔法をかければ鞄の動きは止まった。  ちょっと強めにかけたから魔物といえどしばらく動けないはず。さて、ととサイさんを仰向けにして改めて彼の頬を撫でた。  ちゅっと頬にキスをした後、唇にもキスを落とす。私を迎えに来てくれたお礼と愛を込めて。 「……やっぱり私の王子様はあなただけだわ」  3年前、初めてレスキューを使った時に助けに来てくれたのがサイさんだった。一目でその美しさに心を奪われたのだけど、彼は魔物を連れていて、当然私の記憶からそのことを消そうとした。  だけど、私は忘却魔法に耐性を持っていた。魔法をかけても意識を失わなかった私にサイさんの顔色は一気に青くなった。 「まさか君、耐性が?」 「え、ええ……あ、でも誰にも言いませんよ? 助けてもらったのですから」 「信用できないな」 「え」 「ランクは下がるけど仕方がない……君には消えてもらうよ」
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