魔物を連れた僕はダンジョンで遭難した冒険者のレスキューを生業にしている。

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 魔導士なのにパーティーは組まずひとりで挑んでいたようだ。珍しい。 「わかりました。準備をしてすぐ向かいます」 「お願いします」  ぺこりと頭を下げた受付嬢が出て行き、足音が聞こえなくなったのを確認してから鞄を開ける。ぷはっと大げさに息吐いたが2、3日は酸素が無くても生きていけるはずだから人間のまねをしているのだろう。  随分と人間臭くなった魔物だ。いや、なってしまったと言うべきかもしれない。 「ココミチ、今回の対象だ」 「おう……臭いは覚えた。いつでも行けるぜ」 「よし、じゃあ行こう」  準備しておいたレンジャーキットの中身を点検する。ロープや携帯食料などが入っているが僕には必要ない。持っていくのは手ぶらで向かうと色々怪しまれるからで、必要なのはココミチだけだ。  レンジャーキットと共にガラクタばかりの鞄を持って、清潔な待機室を飛び出した。 〇  シルヴェ湖のダンジョンは初心者向けとはいえ基本的にはパーティーを組んで挑む難易度だ。  それをどうして、魔導士が単体で挑んだのか。不思議に思いながらギルドの用意した船で湖中央にある小島へと向かう。 「ここか」
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