魔物を連れた僕はダンジョンで遭難した冒険者のレスキューを生業にしている。

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 保険に入っていない冒険者には簡単なセールストークだけしておいて、さっさと離れる。たまに最後まで助けてくれないのか! と食ってかかる冒険者がいるが、僕にとって利益がないのにどうして助けなければいけないのか。  保険に入っているなら正式な依頼を出してくれればすぐ助けるけれど、そうでないなら放置が基本だ。 「お前って意外とドライだよな」 「そうかな」 「……」 「それより依頼者のところへ急ごう。ココミチ、この辺りならどうだ?」  鞄の口を大きく開いてココミチに臭いをかがせる。クンクンと鼻を鳴らしたココミチが「右から3番目の通路だ」と言うのでそれに従う。臭いの判別ができたのだろう。 「それにしてもこの臭い」 「ん?」 「いや、どこかで嗅いだ記憶があるんだが」 「まさか」  冒険者にとってレスキューを頼むことは恥ずかしいことらしい。だから、レスキューを頼む頻度が高い冒険者はランクが低いと判断されて、受けれる依頼も少なくなってくる。
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