ハイクールな庭野くん

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 異常気象、という言葉があるらしい。  田舎の盆は目的と手段が反対になる代表格だと思い知った去年の夏、いとこのカオ兄が言っていた。夏に夕立がなかったり、梅雨がいつまでも続いたり、冬に雪の量が減ることも、異常気象だという。  私は秋にひとつ年を重ね、今日、中学二年になる。陽だまりといってもそれは窓際の机上だけ。新学期の教室は生温かいものではない。立ち位置をはっきりさせるたった一度の機会に女子のスカートは普段より短く感じるし、男子の声はより大きく聞こえる。私は運良くユカコと同じクラスになれた。ユカコは耳下で二つに結ぶ髪をキレイにストレートに伸ばしている。サバサバに見せかけてねちっこいけど、当たり障りなく接していれば居心地は悪くない。 「そろそろ起きて、眠り姫」  陽だまりに突っ伏してうとうとしていれば、頭上からユカコの声がする。 「眠り姫?」 「そう、この子よく寝るの。あ、起きた」  ユカコの声より高いけど落ち着いた、聞き覚えのない声に顔を上げれば、黒髪ボブの華奢な女子がいた。胸元の名札に「田村菜々」と書いてある。校内だけで付けるからとほとんどの生徒は机に置いておくだけなのに、と見ればスカートも膝丈だ。そのうち田村菜々は「あっ」とスカートをつかみ視線を泳がせた。
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