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「や、やっぱり変だよね」
「なにが?」
ぼーっとしたフリを続ける私の髪を弄るユカコが後ろの席に座りながら反応する。会話に入る隙がなくて、私は右斜め前にウルフカットで大人しそうな男子が座っているのを見つけた。校則違反のもみあげで、姿勢良く読書をしている姿はアンバランスだ。まさに中二、いや、厨二といった感じ。考えながら、柔らかいユカコの指先が毛束をとるたびにまた睡魔が襲ってくる。
「真面目だ、って言われるから」
「いやなの? マジメ」
動かないウルフ男子に飽きて、半分うとうとしながら田村菜々を見る。田村菜々はうーんと首を傾げる。
「別にナナの好きにしたらいいんじゃない? うちら気にしないし。何ならこの子、スカートの長さとか毎日違うよ」
今日は短めかな、とユカコは続ける。後ろの机に腰掛けてヒトの髪を結ってはほどき、結ってはほどき、さらには私をこの子と呼ぶ。何がメリットかはわからないけどいつも隣にいる。私もまた、何がメリットかわからないけどユカコといるのをよしとしていた。
「中井さん……ありがとう」
「去年のクラスで何言われたのか分かんないけどさ、好きにした方がいいよ。あ、あとユカコでいいから」
こっちはミーヤン、とユカコに指名された。のっそり姿勢を正し、髪を整えひとつに結び直しながらニコッと笑う。
「よろしく、ナナ」
ありがとう、とナナは頬を緩める。ユカコは満足そうに抱きつき、先生が来るまで今年も花見デートができなかったという話をしていた。
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