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プロポーズ
6月の第三週、先週の日曜日のことだった。
久しぶりに参加した結婚式の二次会で妙な男性と知り合った。
周りは結婚に昇進、妊娠や出産の報告と次々人生のステージを切り開いていく中、一向に私の人生には何もなかった。
就職した当時はリーマンショックで、最初に内定を貰えた会社は2年で潰れた。次は派遣としてそこそこ大手に潜り込むも、何社か転々とした。そんな中で先月は、突然のリストラ宣告。
30目前で失業中の私には、その場はもっとも似合わなかった。
たまたま招待状が届いたときには、今ほど悲惨なことになるとは思っていなかった。
キラキラした新郎新婦の姿を目前に、自分の心が荒んでいくのがはっきりと感じられた。
あまりに場違いすぎて、こんな惨めな気持ちを味わいに来るくらいなら、来るんじゃなかった。
だから、とりあえずみんなとは離れたカウンターで、1人グラスに注がれたワインを流し込んでいた。
終始流され続ける明るいBGM。新郎新婦が用意したゲーム大会は盛り上がっているようで、時折聴こえてくる楽しそうな歓声。その時には、飲み始めは付き添ってくれていた友人の穂乃果にも愛想をつかされ、私の周囲にはだれもいなくなっていた。
そんな私の元に1人の男の人がやって来た。
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