仮面

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私は緊張した面持ちで、そのマンションの前にいた。 世田谷にある高級な低層のマンションで、外観はシックでブラウンが貴重だった。 浅井さんとデートしてから、もう3週間は経っていた。 その間、モバイルメーセンジャーアプリを使ってメッセージをやり取りしたのは20通にも満たなかった。 私も何を送ればいいのか分からないまま、無難なことを書いて送ってしまっていた。 浅井さんのメッセージは単調で、気持ちが読みづらかった。 でも、夜やり取りする時に最後はお休みなさいとアニメキャラのスタンプを送ってくるのが少し意外でもあり、嬉しくもあった。 そんな浅井さんから、デート、いや家に来ませんかとお誘いをいただいたのは、先週の木曜日だった。 彼は完全なオフはないようだった。 【家に来て貰えるなら一緒に過ごせるけど、それじゃあダメですか?】 とメッセージが来た。 私はちゃんと会って、先日の千瑛さんから聞いた話を確かめたい気持ちもあり、ケーキを持参し始めて浅井さんの自宅を訪問した。 エントランスにあるインターホンで番号を押して、呼び出してみる。 数秒程で、浅井さんの声が聞こえて来た。 「はい」 「若菜です」 「今開けます、どうぞ」 エントランスにあるドアのロックはすぐに解除されて、私は緊張した面持ちで中に歩を進めた
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