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廊下を抜けて突き当たりのドアを開くと、広々したリビングとダイニング、それに窓の向こう側にはテラスが見えた。
私は思わずため息が漏れた。
「素敵なお家ですね」
「ありがとうございます」
浅井さんは少し照れ笑いしながら、中へと案内してくれた。
「あ、これ大したものじゃないけどケーキ買って来ました」
「お気遣いありがとうございます、後でいただきましょう」
私が忘れないうちにと浅井さんにケーキの紙袋を手渡すと彼は笑顔でそれを受け取ってくれた。
「一応片付けたんですけど、今日は家事代行入れてなくて、あんまり綺麗には…」
「充分綺麗です。うちより」
「はは、それなら良かった。そういえば、ここ遠くなかったですか?」
「あぁ、電車で40分くらいでした」
「武蔵野小杉でしたっけ?遠い気したけどそんなもんなんだ」
「はい。乗り換えがあるけどそんなに遠くには感じませんでした」
「そうでしたか」
浅井さんは首を頷かせながら、キッチンへと向かった。そして、キッチンの戸棚を開けて、カップを取り出すと、背後から尋ねてきた。
「コーヒー、紅茶くらいしかないんですけど、あ、ルイボスティーもあるかな、何がいいです?」
「じゃあ、紅茶でお願いします」
私が振り向いて答えると彼はケーキを取り分ける分のお皿を用意し始めた。
「手伝います」
「いいですよ。好きにしてて下さい」
浅井さんはそう言って私の申し出を断ると、今度は湯を沸かし始めた。
私は手持ち無沙汰になったのもあり、窓の外を見た。
空は青くて綺麗に晴れていた。
「あの、外見てもいいですか?」
「はい、どうぞ」
私は浅井さんに確認を取ると、ウッドデッキのあるテラスへと出た。
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