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そして、同時に気付いてしまった。
彼の本心は目の前にいる自分以外の誰かに向いていることも。
あくまでビジネス。
彼の話を聞く限り、そういうつもりなんだ。私は、結婚はともかく、仕事のつもりでこの話引き受けてもいいんじゃないかと頭を切り替えた。
あんなプロポーズちっくに話を持ちかけて来ただけで、最初から今の話してくれたらもっとスムーズに話進んだんじゃないの?
そう思うとちょっとイラっとした。ただ、仕事と割り切るなら悪い話ではないと思った。結局お金ないと生活できないし、とくにもうやりたい職なんてなかったから。
このまま無職では暮らせない…
「あの、お話聞く限り短期雇用ってことでよろしいですか?そのパーティーだけのために婚約者を演じて欲しいってことですよね」
「は、はい。出来ればそうして頂けるとありがたいですね。ただ、もしお仕事他に決まらないようでしたら、何か紹介致しますので、そこは安心していただけたらと思いますし、その当日の仕事ぶり次第では、再度雇用させて頂けたらなぁとは思いますけどね」
彼は少し照れ臭そうな表情で前のめりになると、上目遣いで此方の様子を確かめて来た。
私は急に戸惑った。え?
今の下心ある感じだよね?
もし、そうならむしろ私が利用してもいいんじゃないかな?
派遣社員って枠ではあっても社長ともなれば、いい仕事紹介してくれそう。
そこで、私は乗っかったフリをして気のいい返事をしてみた。
「あの私を妻に選んだ理由と報酬次第では、次考えて差し上げても結構ですよ」
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