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告白
もうすぐ11月。肌寒さが身にしみる季節になっていた。
おまけに今日は久しぶりの雨だった。
最近仕事は思ったより順調だった。
ただ、ひとつを除いてはーーー
「あの、私はモデルを続ける気はないです」
「いやいや、そこはね、せっかく取り上げて貰えたんだし、まずは今回はやってみようよ」
社長はそう言うと、スケージュリングを始めた。
私はあの広告が、そんなに注目を浴びるなんてことは考えていなかった。
だが、今はSNSの時代だ。
誰かがモデルの素性を知ろうと検索してもおかしくはない。
#あのモデルに見覚えがあるんだけど…あれはTAKERU?###
ある女性が持っていた雑誌と広告の動画を比較するような動画をあげた結果、何故かその相手のモデルに言及してしまった人がいた。
###この口元の人に似てるよね?ひょっとして同じ人なんじゃないの?背も高そうだし###
###何か素人っぽくはないよね?###
###この子、そんな人気なかったけど、やたらスタイル良かったよね、名前忘れたけど###
###でも、お似合いだったよね?###
そうして、SNSで瞬く間に検証が始まった結果、ついにあるファッション誌からモデルとして雑誌へのオファーが来た。
アラサー世代のファッション誌でちょっとした特集を組んでみるから、是非2人で対談して欲しいというものだった。
私はモデルとして当時は見向きされることもなかった。
でも、まさかこんな形で陽の目を見ることがあるなんて人生は分からないものだなぁと思ってしまった。
嬉しいような、複雑なような気持ちだった。だが、赤西社長にとっては恰好のビジネスチャンスだったのだろう。断る理由もなかったんだと思う。
今日がその撮影日だった。
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