告白

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終始現場は穏やかで、久しぶりとはいえTAKERUくんのおかげか、緊張も適度にほぐれて、いい感じに撮影を終えた。 「撮影は以上です、お疲れ様でしたー」 カメラマンさんが写真を確認し終えてそう告げたことで、私は一気に安心して気が抜けてしまった。 だが、丁度撮影を終えた私の元に、タイミングを見計らうように現れた人物がいた。 まさかだった。 スタジオ内は異様な空気が漂い、スタッフ達がざわつく中、彼女はそう告げると、キッと私を睨みつけた。 「あれって神尾凛よね?」 「うそー!!神尾凛だー!!私生で見るの初めて」 黄色い悲鳴にも似たような噂話でスタジオが湧く中、国民的女優らしく眩いばかりの光に包まれて彼女は近付いて来た。 神尾凛 彼女は名前の如く、凛とした佇まいだった。色白の痩躯に黒いロングドレスにを纏い、薄紫のショールーを羽織っていた。目線を下げて、足元を見ると10センチはあるかと思われるピンヒールを履いていた。 突如現れた女神に、混乱した私はただ圧倒されるばかりで何も言えずにいた。 そもそも何故彼女ほどの大女優が私の前に現れたんだろう… 浅井さんだよね…きっと 私が戸惑っていると彼女は尋ねて来た。 「何しに来たか分かるでしょう?」 「はい」 私が戸惑いながら、返事をすると、彼女はカツカツとヒールを鳴らして、威圧的な態度で苛立ちを見せながら更に近付いて来た。 「あまり時間がないの。着いて来て下さる?」 私は驚きと脅迫めいた彼女に対する多少の畏怖心で首を小さく縦に数回振ると、凛さんに従った。 私が了承すると、少しだけ表情を緩めた彼女は踵を返してスタジオの入り口へと向かった。 「では、佐々木様もご一緒にお願いします」 私は異様な雰囲気に皆から注目を浴びる中、ビクビクしながらマネージャーさんにそう促され、後を付いていった。 「佐々木!」 TAKERUくんが心配そうに私の後を追いかけてくれたが、私は振り向いて頭を左右に激しく振ると、それを強く制止した。 そして、足早にスタジオの出口へと向かった。 3人でエレベーターに乗り地下駐車場に向かう。 駐車場に着くと、あからさまにピカピカに磨かれた高級車が用意されていた。 車の種類には疎い私でも、それがロールス・ロイスだとエンブレムで気付く程だった。 「乗って」 私は言われるがまま、高級車に足を乗せるとそこには先客がいた。
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