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宏光さんは、そんな私の左手に指を絡めると、ぎゅっと堅く握りしめた。
「泣かないで」
私は右手で涙を拭うと首を横に振った。
「言うタイミング逃してしまって…こんな不躾なやり方してしまいました」
「いえ、話して下さってありがとうございます。こんな辛い話なら、話すの勇気要りましたよね」
「ううん、今はもう大丈夫。それより、俺はあの後、あなたを探したこともあったんですけど、名前以上ははっきり分からなかったんです」
「そうだったんですか?」
「結婚式の日の席次であなたの名前を偶然見つけたんです。まさかなぁと思いながら、探していたら、スラッとした綺麗な女性を見つけました」
宏光さんはそう言うと、ふふっと笑った。
「どうされましたか?」
「いや、お友達との会話盗み聞きしてしまうと、どうやら無職みたいだから、一か八か賭けてみたいなと思って、あなたのこと確かめたくて執着してしまいました」
私は気まずくて、ちょっと目線を逸らせると、彼は私の顎をクイッと自分の方に向き直らさせた。
思わず目が合う。
恥ずかしさもあって、よく顔を見て来なかっただけで、宏光さんは本当に綺麗な顔をしていた。
まつ毛も長くて、ちょっと釣り上がった二重だった。私を見つめる瞳は透明感が凄くて、色素が薄かった。吸い込まれてしまいそうだと思った。
すると、彼は軽く口付けて、私を抱き寄せると、低く甘い声で告げた。
「若菜、俺を幸せにして欲しい」
私はあまりの緊張と動揺と高揚感で完全にフリーズしていた。
すると、また浅井さんが話し始めた。
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